第八話 戦果
迷宮の中では外の景色がわからないが恐らく日が昇る時間帯に開は重い体を起こした。
「この藁のベッドはどうにかならないもんか。寝心地がすごく悪い」
簡素なベッドでは藁が限界だ。どうにか寝ているものの熟睡には程遠いようだ。毎日早く起きてしまう開はまるで老いた体だ。
「それでも睡眠というのは大事だな。いつまでも悩んでなんかいられないさ」
睡眠によって不安感を和らげた開は朝から精力的に動き始めた。森で集めた食料を簡単に調理し食欲を満たす。
「肉が食べたいというのは贅沢な悩みだったんだな」
森で採れたのは木の実やキノコなど満足感を得られるものはない。元々多く食べる方ではないがこの生活が満たされているとは考えづらい。
口をゆすぎ椅子に座り直した開は先日の戦果を確認する。
「この世界の言葉がわからないというのは杞憂だったようだな」
開は昨日の出来事を思い出していた。迷宮に侵入した二人の冒険者のことである。二人の言葉は違和感なく通じていた。迷宮の説明文だから日本語に見えるというわけではなく言葉もわかるのだ。異世界の言葉が翻訳されているのだろう。
「まずはDCの確認だな」
残DC:6960
「約二、三千増えているか。これから冒険者が増えるだろうから一人につきこれだけ手に入るなら期待できるな。ファイアボールはどうやら一発30DCだからな。改良の時に試したらかなり持ってかれたからな驚いたものだ」
DCに引き続き開は手に入れた物資も確認しておく。
鋼のロングソード
鋼の鎧一式
治癒のポーション 四つ
解毒のポーション 五つ
携帯食料 四つ
硬貨少々
他の物は燃えてしまったりとダメになっている。
「DCも物資も手に入って中々にいい戦果じゃないか。ただこのままでは不味い。二人、いやDランク冒険者が一人来ただけでも攻略される恐れがある。迷宮の強化が必須だ」
開だけが持つ迷宮のシステム、”ダジュール”。これが迷宮を大幅に強化する鍵だと考え開はダジュールで可能なことを調べ始める。
作成したシステムは時間ごとにDCが支払われ、停止しておけば支払うことはない様だ。ただ停止してしまうといざ使いたい時に即座には使えない。
現在使用できるのは
ダンジョンアップス
迷宮上で実行可能なアプリケーションサービスである。性能によってDCのコストが変わり、また自由に性能をスケーリング可能である。
ダンジョンデータベース
関係データベース管理システムを持つデータベースである。迷宮から得た情報を保存できる。
この二つだ。そこから先どの様に組むかは開次第。
ダジュールと魔物を組み合わせることで強力な迷宮になると決定づけた開は魔物の一覧を再び見る。ゴブリンに戦略でも教え込ませれば大幅な戦力増強になるだろう。しかし開はそんな知識は持っていない。開にできる方法を考えねばならないのだ。知識といえばもう一つ開は持っていた様だ。
「劣等蜂か。蜂ならよく知っているしうまく回せるかもしれない」
開は毎週蜂蜜を水に溶かし飲むのを楽しみにしていた。ただの蜂蜜ではなく果汁と蜂蜜を混ぜたものが商品として売られていた。様々な種類があったが開は柚子を混ぜたものがお気に入りだった。それ以来嫌悪感でしかなかった蜂に興味を持ち少し調べていた。
「よし劣等蜂にしよう。こいつで迷宮を強化する。強力な毒、増殖性、数によるダジュールとの連携、こいつならいけるだろう」
劣等蜂を召喚し迷宮の階層を増やす。開は二階層を中心に蜂の巣を作り上げていく。




