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第四話 ダンジョン出現

 

 鬱蒼と茂る森の中、人々の不安を駆り立てるような暗闇が誘う洞窟があった。そこから出て来たのは緑色の小鬼、ゴブリンの影が三つと黒髪の青年だ。はたから見れば心配される状況だが、青年がゴブリンを連れているように見える。そう彼は魔物を従える者、迷宮主ダンジョンマスターである。


「まさかダンジョンの外に出るにはダンジョンを出現させる必要なあるとはな」


 開は外に出るなりそうぼやく。そんな開はダンジョンの中にいた時よりも装備が整っている。とりわけ特別でなさそうな革装備に全身を包んでいる。腰にはポーチとナイフをぶら下げている。


 お供のゴブリン三体も武器を持っている。一体だけはロングソードを身につけている。開はその武器の違うゴブリンを見る。


「まさか剣すら振れないとはな。自分の筋力のなさが嫌になってくる」


 開の筋力は1である。平均よりも著しく劣る数値である。ナイフが関の山それでも戦闘ではまともに使えないだろう。それでもないよりはマシという考えだろうか。


「まぁいいゴブリン達行くぞ。近場をすこし見て回る」


 開はゴブリン連れて歩き出した。道が整備されていないため木々の間をくぐり抜けて行く。

 ここまでは地球の森となんら変わらない。整備されていない森など珍しいものでもない。見たことのない植物が生えてはいるが、一介の高校生である開がこの世界特有のものかどうか判断することはできない。


「この木の実が食べれるものかどうかわからないな。ダンジョンのように説明を見れないし持ち帰って見れるか確かめるしかない。分かるのはこの薬草だけだな」


 ポーチに食べれそうなものを入れて行く開である。そんな開に近づく音が聞こえる。何かが這いずるような音だ。開はそちらへ目を向ける。


「何だ...?」


 現れたのは小さく水色で丸い年液体の魔物。そのフォルムに油断を誘われるものも多い。開の迷宮でも多く生息する生物スライムだ。


「スライムか。ゴブリンここは下がっていてくれ。魔物の中でも最弱に位置するこのスライムなら俺の初戦闘には丁度いい」


 開は腰の短剣を抜き正面に構える。スライムの弱点はコアである。透き通る水色のスライムは核の位置がすぐに分かる。

 開は短く息を吐きスライムに詰め寄った。ナイフを核へと振り下ろす。


「グフッ」


 受けたのはスライムの反撃。スライムは開の鳩尾へと体当たりをかます。蹲る開だが魔物を前にいつまでも蹲るわけにはいかない。痛む身体に鞭を打ち距離を取る。

 再び構え直す開。じりじりとにじり寄る。先に動いたのはスライム。同じ体当たりが飛んでくる。開は危なげなく避ける。そのままスライムの着地点を狙いナイフを突き立てる。スライムは核を貫かれ動かなくなった。


「スライムとはこんなにも恐ろしい魔物だったのか。この世界は悪鬼羅刹が住まう恐ろしい世界なのかもしれない」


 最弱に位置するスライムに苦戦した事で戦々恐々とする開だが、ただ単に開が弱いだけである。

 辛勝も辛勝だが開は勝ち自分のステータスを確認する。


 ==================

 名前: 雲情うんじょう かい

 種族: 迷宮主

 Lv: 1

 HP: 1/10

 MP: 10/10

 物攻: 1

 物防: 1

 魔攻: 1

 魔防: 1

 敏捷: 1

 知力: 50

 器用: 50


 スキル


 魔法


 固有能力

 オープンソース


 称号

 ==================



「なっ!」


 確認するないなやポーチから薬草を取り出し急ぎ口にする。苦味に顔をしかめながら咀嚼する。残HP僅か1、スライムの一撃で開は死にかけていた。


 ==================

 名前: 雲情うんじょう かい

 種族: 迷宮主

 Lv: 1

 HP: 10/10

 MP: 10/10

 ==================



「危ないところだった、自分のステータスの低さを甘く見ていた。これはこけるだけでも危ないかもしれない。気づいたら死んでいたなんてことになるかもな」


 死んだら気づくこともないだろうが笑えない冗談だ。スライムの核を回収した開は先頭を一体のゴブリンに任せ進んでいく。変わらぬ風景だが過ぎていく木々がゆっくりになったのは開が慎重になったからだろう。気を張った状態だからだろうか開は近づく物音に敏感になっていた。


『グギャグギャ!』


 現れたのはゴブリン。開が召喚したのではなく野生のゴブリンだ。しかしそのゴブリンは右腕が黒ずんでいて走り方もおかしい。どうやら何かから逃げているようだ。


「任せたぞ」

『ゴブ!』


 ゴブリンがゴブリンに立ち向かう。ロングソードを構えとも呼べない持ち方で叩くように振り下ろす。そこに技などありもしなかった。ただ無傷なゴブリンが力任せに勝っただけだ。

 先ほどとは違い飛び散る血しぶきに顔をしかめる。


「できれば道か何か見つけたかったが無理はしないほうがいい。課題も見つかったし帰ろう」


 開はゴブリンに倒したゴブリンを持ち帰るように指示する。そして迷宮へと歩き出した。そんな疲労を感じさせる開に追い打ちをかけるように飛んできたのは罵声と暴力だった。


「おとなしく殺されなさい『ファイアボール』!」


 正確にはゴブリンへの魔法による攻撃だ。背中から焼けつくような拳大の火の玉が飛んでくる。


「逃げろ!死ぬぞ!」

『『『ゴブ!!』』』


 迷宮へと逃げ込んだ開を追いかけ迷宮の入り口で立ち止まったのは赤い髪を後ろで結んだ少女。先ほど開たちにファイアボールを食らわせた張本人だ。


「うそ、人がいたなんて。それにここってもしかして迷宮?急いでギルドに報告しなくちゃ!あの人を助けないと!」


 踵を返してかけていく少女。開はこれから迷宮の存在を知られることとなる。


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