第一話 どうやら俺はダンジョンマスターらしい
開が眼を覚ますと無機質な白い部屋で横になっていた。広さはマンションの一室ほどで壁にはシミひとつない。そして入口も出口もない。あるのは怪しく光る両手で持つほどの玉と一冊の本だけだ。
「一体俺は何をしていたんだっけ?」
開は辺りを頻りに見回し見慣れぬ場所に自分がいることを不思議に思っている。未だ寝ぼけ眼でありながら首をひねっている。
「ーーあぁそうだ謎の女に異世界に飛ばされたんだったな。ここは異世界なのか?」
疑問に思うのも当然だろう。ここには異世界らしいものは何一つないのだから。まだ眠らされどこかに拉致されていたという方が納得する。
「物が殆ど何も無いと広く感じるな。物だけでなく見る限り出口も無しと。こうも白いと落ち着かないな」
開はしばらく歩き壁をなぞるように触る。入念に調べているが何も見つけられなかったようだ。あるのは目が覚めた場所にあった俺が持ってきた鞄と本と水晶玉だけだ。
開がポケットからスマホを取り出すが当然のごとく圏外であった。ただし連絡するのが目的ではなく周りと水晶玉と本をカメラで撮ることが目的のようだ。
「思い出で終わりそうだが一応撮っておくか。」
写真を撮った後ポケットに再びしまい、本の前に座った。
「ここにあるのは本と水晶玉か、手始めに近くの本を調べてみるか。何か書いてあるかもしれない」
開は手を伸ばし本を手に取る。ページをめくり食い入るように読んでいる。今の彼に話しかけても返事はないだろう。
しばらく読み入り手を止めた。ページを始めに戻したようだ。
「ビンゴだな。この本は説明書だ。この水晶玉は迷宮核と呼ばれ迷宮の核だ。そしてこの部屋は迷宮を設計する前段階の部屋だ。そしてどうやら俺は迷宮主らしい」
開が読んだ本の内容はこうだ。
ここはインベリアと呼ばれる異世界である。所謂剣と魔法の幻想の世界で昔から迷宮が溢れている。迷宮とは迷宮主を頂点としその配下である魔物を召喚し迷宮を作り上げるものである。設計、召喚は全て迷宮主が迷宮核によって行われる。そして迷宮核を通して行われることには一部を除きDCを消費する。迷宮主は自身の迷宮に関しては全ての権限を持つ。
迷宮主となった者は皆始まりの部屋にて迷宮の設計を行う。設計が終わると迷宮は表世界に姿を現す。
一定期間設計を行わない場合強制的に姿を現わす。
迷宮は主に冒険者に日夜襲撃を受ける。
DCを集めるには迷宮に侵入した迷宮に属さない者を迷宮内で殺す又は、魔力か生命力をDCとして徴収することで集められる。徴収するには迷宮内に継続して滞在しているものにしか行われない。そして他の迷宮の迷宮主を殺し迷宮核を奪うことで、その迷宮が持つDCを全て奪うことができる。
以上が開が読んだ内容だ。まだまだページは残っているが現状を理解するには十分だろう。
開は正体の知れた水晶玉、迷宮核に触れている。開の目には見えているのだ。この迷宮の設計図が。
「迷宮のステータスと迷宮主である俺のステータスが見れるみたいだな」
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名称:未開放の迷宮
ランク:下位
迷宮主:雲情 開
DC:20000
階層:0
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「迷宮はまだなにも設定してないからこんなものか。初期のDCは二万あるようだな。これでどれだけいじれるのか楽しみだ」
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名前: 雲情 開
種族: 迷宮主
Lv: 1
HP: 10/10
MP: 10/10
物攻: 1
物防: 1
魔攻: 1
魔防: 1
敏捷: 1
知力: 50
器用: 50
スキル
魔法
固有能力
オープンソース
称号
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「これは弱いな。標準が分からんがステータスで1が強いということはないだろう。知力と器用にかけるしかないだろうな。
ただ気になるのはこの固有能力、オープンソースか。少し見てみるか」
固有能力
その者が持つ唯一無二のスキル。先天性、後天性合わせても保有する者は少ない。その特異性故か総じて強力な力を持つ。
オープンソース
魔素で構成される物質、現象のソースコードを見ることができる。
「迷宮主だ。希少だろうが固有能力はあるだろう。それにしてもソースコードか、俺には一つしか思い浮かばないな」
開はプログラミングが大好きだ。三度の飯より好きと言ってもいい。キリがつかないと食事を後回しにし結局は次の食事まで食べないということがあった。そんな開がこの異世界でプログラムを組むなんて一体全体どうなるか見当がつかない。




