第十七話 森の噂
「おい聞いたか最近森の方でゴブリンが増えているらしい」
「ゴブリンなんてそこら中にいるじゃねぇか。ほらそこにも」
「ありゃ調教済みだろうが。そうじゃねぇ半端な数じゃねぇって話だ。噂じゃゴブリンジェネラルかゴブリンキングが発生したらしい」
「まじかよ。そのうち緊急クエストでも来るかもな」
「まぁ今夜は」
「「飲もうや!」」
喧騒の広がる五月蝿い屋内。酒の匂いが充満している。屈強な男どもが酒を酌み交わしやれ今日の収穫がどうとか、やれどんな魔物を倒しただとか話し合っている。ここは憩いの場。日々の疲れを酒で洗い流している。
そんな中カウンターで一人飲んでいるのが開だ。
(冒険者たちが酒場で飲んでいる。ただそれだけでこの喧騒もこのまずい酒も良いと感じる。これぞ異世界、ファンタジーだ)
「はいお待ちどう様」
開の前にシチューのようなものが出された。料理を作りここの店主でもある彼に開は話しかける。
「向こうの冒険者が話しているゴブリンキングってのがどうかしたのか?」
「最近新人冒険者がやられているみたいでな。ゴブリンが大量発生だとよ。結構統率も取れているみたいでな、ゴブリンキングがどうかは知らんがリーダーとなる魔物が発生したのは確実って話だ。兄ちゃんも気をつけろよ」
「あぁありがとう」
(俺の迷宮と同じ森にゴブリンキングか。被害は冒険者だけのようだし関係なく終われば良いが...)
◇◆◇◆◇帰路の途中噂通りゴブリンの数が多くなっている中、開のゴブリンがなぎ倒している。装備を整え迷宮の力により知力も高いゴブリンが通常のゴブリンに遅れをとることはない。
「ゴブリン強くなったな」
『ゴブ!』
褒められて嬉しそうである。森を進みあと少しで迷宮というところでゴブリンに襲われている冒険者を発見する。どうやら魔法使いのようで近距離まで追い詰められている。
「仕方ない。ゴブリン合わせろ『ウオッシュレット』」
ついこの間作成した魔法を用い魔法使いを取り囲むゴブリンの注意を引く。突如として水をかけられたゴブリン達は驚きの声とともに振り返る。
『ゴブ!』
しかし開に合わせ既に目の前へと移動していた開のゴブリンによって斬り伏せられる。奇襲というのはそういうものだ。本来の実力の半分も出せない。まして対策がなければ戦いにすらならないことだって儘ある。
「余計なお世話だったか?」
開は魔法使いに手を差し伸べた。
「いいえ助かったわ。ありがとう」
そうお礼を言う魔法使いは見覚えのある少女だった。あれは開にとって忘れられない出来事であり教訓でもある。
「私はフィレンあなたは?」
彼女はフィレン、火の魔法使いであり開を殺そうとし助けようともした少女である。髪はボサボサになり服も薄汚れている。以前とは違い光がなくなったように思える。
「俺は開だ。大丈夫そうだな。うん頑張れ。では」
「えぇそうね。ありがとう。私は大丈夫。こんなところで止まってられないもの」
早々に立ち去ろうとした開だが立ち止まってしまう。彼女の気丈さに危うさを感じてしまったのだろう。全て開が原因だというのに。
「そんな状態でどこへ行くつもりだ。ふらふらじゃないか」
「止めないでよ!全部私のせいなんだ...から」
開の制止を振り払いそのまま行こうとするフィレンだが、糸が切れたように倒れてしまった。開は困ったように支えると。ゴブリンに運ばせた。




