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第十六話 進化

 

主人様マスター何をしているんですか?』

「いったい誰だ?」


 開のことを主人様と呼ぶ彼女は人間では無かった。人型で人語を解すがその特徴的な触覚、羽尻尾のような蜂の腹部。正に人型の魔物である。


「まさか俺の迷宮ダンジョンの魔物か?」

『ええそうですわ主人様がお出かけになっている際に進化しましたの』


 ==================

 名前:

 種族: クィーンビー

 Lv: 15

 HP: 200/200

 MP: 150/150

 物攻: 87

 物防: 91

 魔攻: 137

 魔防: 89

 敏捷: 189

 知力: 63

 器用: 160


 スキル

 統率lv3 針術lv2 毒lv3


 魔法

 風魔法lv3


 固有能力

 女王の命令


 称号

 ==================


 魔物は迷宮主ダンジョンマスターの望みに影響される。迷宮主が力強ければ魔物も力強く、狡猾であれば魔物も狡猾に、蜂蜜を求めれば蜜蜂へと進化し、人との交流に飢えれば魔物は人型へと進化する。全て開が望む通りに導かれた結果である。


「まさか人型になるとはな」

『主人様のお役に立ちたいと願った結果ですわ。これからは冒険者どもを殲滅せよと言われれば蜂達こどもたちを命令通りに動かせますわ』


 今迄も開の意思通りに魔物に命令することはできた。ただし知力か言葉の壁か簡単な命令しかできなかった。だが彼女を介してならば複雑な命令ができるようになったわけだ。


「ならこういうのは出来るか?」


 ◇◆◇◆◇


「やぁカイくん今日も良い蜂蜜を頼むよ」

「はい今回のは自信がありますよ」


 開は再び町へ来ていた。約束していた蜂蜜をギーレントへ卸している。今回も同じく小壺十個ほどだ。

 ギーレントは開の言葉を受け蜂蜜を味見した。


「今回のはまた一段と素晴らしいね!前よりも格段に美味い!一体どうしたんだい?」

「たまたま採れた蜂蜜が良かったんです」


 もちろん偶然ではない。クィーンビーに頼みより上質な蜂蜜を採れるようにしたのだ。蜂蜜だけを蓄える巣を作り蜂に熟成させる。ここでしかできない開独自の養蜂方法だ。


 開は蜂蜜を卸しその対価を受け取った。そしてギーレントが次からのことについて話し始めた


「そろそろ私は王都に戻らなくてはいけなくてね。カイくんとこうして会うのは今日が最後になる」


 開が少し残念そうな顔をするとギーレントは話を続けた。


「安心してくれ。取引はもちろん継続される。次からは私の店の従業員が受け取りに来るだろう。カイくんと会うのを楽しみにしていたのだがね」


 開に会うことが楽しみと言っているが、開ではなく蜂蜜だろう。ギーレントは純粋に美味しい蜂蜜を求めているのだ。


「ならば王都にも送れるように蜂蜜の数を増やしましょうか?」

「おぉまだ余裕があるかい?」

「えぇ次からは今の倍卸しましょう」

「頼むよ。部下に話を通しておくよ」


 こうして今回の商談は終わり、開とギーレントが再び会うのは王都かギーレントがこの町にまた来た時となった。



 商人ギルドを出た開は町を探索していた。前回はギーレントの店へ行っただけで大して見て回って無かったのだ。


「こうして見ると中々楽しいな。店も多いし見たことのない人種がいる。なぁゴブリン」

『ゴブ!』


 開は落ち着きなく辺りを見回す。実物を決して見れなかった獣人や小型で大きなドワーフ、美形揃いのエルフなんかも歩いている。開も興奮を隠せないでいるようだ。隣のゴブリンは食い意地が張っているようだが。

 開はゴブリンにせっつかれ屋台で串焼きを買っている。


「兄ちゃん何本欲しいんだい!」

「二、いや三本で」

「三本ね!代金は60ラムね」

「はい。ありがとう」


 ゴブリンに二本渡し開は一本食べる。焼きたての肉汁が溢れる一品だ。


「うまいなゴブリン」

『ゴブ!』


 ゴブリンはペロリと二本を一気に食べてしまう。

 開は食事がが目的ではない。街を探索しながらもある店を探していた。その店を見つけたようだ。


「少し見せてもらうよ」

「金はあるのかい?高いよ魔法書は。ひひっ」


 屋台に並べられた魔法書の数々。老婆が営む魔法書の店だ。


「ふむ魔法陣の本はないか?」

「またけったいな物を欲しがるね。うちにはこれしかないよ」


 一般に使われるのは詠唱魔法だ。品揃えも殆どがそれになる。しかしそれでは読んだだけでは魔法を読み取れない。開が求めるのは魔法が発動するまでの過程が全て載っている魔法陣である。


「ありがとう。いくらだ?」

「そうさねぇ一万ラムでいいよ」

「おいおいこんな物を俺以外が買うのかい?もう少し安くならないか」

「ちっ余計なことを言っちまったねぇ。九千ラムでどうだい」

「五千ラム」

「冗談じゃないよ。八千ラムだ」

「六千ラム」

「七千ラムこれ以上は下げられないね」

「まぁいいか。はい代金だ。ありがとう」

「全く嫌な客だよ。でもまぁ売れ残りを買ってくれたんだ一つ教えてあげるよ。魔法陣の本なんてどこの店も大して置いてないよ。図書館にもないだろうね。貴族様の蔵書ならあるかもしれないね」

「なるほど。わざわざありがとうね」


 開は代金として大銀貨七枚を支払う。


「貴族様か...見せてもらえる機会があればいいが」

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