第十五話 帰還
クラスメイトとの会談を終えた開は自分の迷宮へと戻ってきていた。
「それじゃあまた一週間後にでも迎えに来るよ」
「あぁ有難うな」
紫音は手を軽くあげると消えていった。迷宮へと帰ったのだろう。
開はベッドへ寝転がる。だが不満げだ。
「いい加減普通のベッドに変えるか」
紫音の部屋を見て自分の部屋のみすぼらしさを再確認したようだ。開はベッドを藁から木で組み立てられ羽毛が詰められたベッドに変更し、キッチンも石造りのキッチンと言えるものに変更した。
「問題はトイレだな。仕方なく穴を開けてそこにしているが水洗はありもしない。紙なんて上等なものがあるわけないし葉っぱじゃ拭き心地が最悪だ」
用を足した後は汲んだ水で洗い葉っぱで拭くという生活だ。かなりのストレスになっているだろう。
「魔法で解決できないだろうか...。ファイアボールを呼び出す関数名は分かっているからウォーターボールが存在すれば呼び出せるだろう。ただ自分のけつにウォーターボールなんてぶち込むわけにはいかないからな」
プログラミングでは関数と呼ばれる処理をまとめた箱がある。その箱に名前をつけたのが関数名だ。関数名を呼び出せばその関数の中の処理が実行される。簡単に説明すればそのようなものだ。
今回の場合ファイアボールという名前がついた関数の中にファイアボールを打ち出す処理が書かれており、開はその関数を呼び出しているに過ぎないのだ。つまりウォーターボールという関数が存在していれば開はその魔法を知らなくても実行できる。
「そう言えば使えそうなものがあったな。たしか魔法陣入門書だったか」
魔法陣入門書
魔法陣について書かれた本。生活魔法から初級魔法まで初心者に優しい一冊である。
「この生活魔法に使えるものがあるかもしれない」
開は早速魔法陣入門書を交換した。少々値が張ったようだが魔法のレパートリーを増やすことには変えられないのだろう。
開は対象の魔法の魔法陣を注視する。
「魔法を発動しなくても魔法陣を見ればソースコードが見れるのは助かるな。この水生成が使えそうだな」
開は試しにと魔法を発動する。供給するDCを少なくなるように変更したため極僅かな水が生成された。
「この水を指向性を持たせ放出できればウォッシュレットを再現できそうだな。ふむ、ウォーターボールに使えそうなコードがありそうだな」
開はウォーターボールのページを開きソースコードを見る。ウォーターボールの処理はこうだ。水を生成、球状に固定、方向を指定、設定された速度で打ち出す。この打ち出すという部分を水生成の魔法と組み合わせ開は新たな魔法を作る。
「水の量、角度はこんなもので、速度も数値を変えればいいだけだな。このままでは一回生成した水を放出して終わりだから生成から放出を一定時間ループさせれば...完成だ。この魔法をウォッシュレットと名付けよう」
開から放物線を描く水の軌跡が放出されていた。後は細かい調整をしてトイレ問題は解決だ。乾かすことに関しては乾燥という魔法をそのまま使うことにしたようだ。
そんな満足気な開に近づく影が一つ。そして彼女はこう言った。
『主人様何をしているんですか?』




