第九話 ダンジョン運営開始
一日中迷宮に潜っていると時間の感覚がなくなる。開の感覚が間違っていなければ一ヶ月程の期間が過ぎた。迷宮の外も変わらず緑が多い。
特筆して変わったのは冒険者の数だろう。EからFランクの冒険者が多く訪れ連日賑わっている。ただし朗らかではないが。
「今日も薬草畑は人気だな。自分のために設置したがここまで必要とされているとは知らなかった」
森で苦労して探さなくても開の迷宮に来れば大量に手に入る。初級冒険者に大人気の迷宮となっていた。もちろん危険はあるが、森で探すのと対して危険度は変わらない、むしろゴブリンやスライムと限定されている分安全と言えた。
「それにしても二階層に無策で突っ込んでくる脳足りんは毎日後が絶たないな。餌が良すぎたか?」
開は二階層を中心に劣等蜂の巣を展開させていた。毒による攻撃は冒険者を苦しめる。
その二階層に餌として金貨の入った宝箱を一度置いた。その餌につられて今日も無力な冒険者が後を絶たないのだ。
とにかく冒険者が多くくるということはDCが多く貯まるということ。それにより余裕が生まれ開は次の段階へ進もうとしていた。
「迷宮に居れば本は手に入るが生の情報が入ってこない。そろそろ町に行っても問題ないだろう」
せっせと準備を始める姿を見れば情報だけが目的でないことは明らかだ。開は飢えているのだ人間との会話に、触れ合いに。人間とは敵対関係にありながら以前心は人間だ。最早人間を殺すことを厭わない開だが人間と友好でありたいと矛盾した行動を取ろうとしている。
「継続的に町へ行くためにも理由が必要だな。セオリー通りなら冒険者だろうが、俺の場合は無理だな」
冒険者になる案は却下する。頻繁に通う必要があり、魔物を倒すのにコストがかかりすぎるため開には向いていないのだ。
「商人がいい。商人にしよう。品物は蜂蜜を売ればいい。いくつか取れているからな。これで体裁は整う」
開は二階層の蜂の巣へ赴き蜂蜜を採取する。
「すまないが今日も分けてもらうぞ」
冒険者を日々肉団子に変えた劣等蜂はいつしか進化していた。開の思考が影響したのか、蜜を蓄える一撃蜂へと。習性は穏やかで針を刺すと死んでしまう。蜜蜂のような魔物だ。
あの時は驚いたものだ。迷宮核から通知が来たと思ったら見慣れない魔物がいるんだからな。いつか進化すると思っていたが単純にレベルが上がる、経験値を積めば進化するようだ。それも蜜蜂とはな。
一撃蜂の巣の蜜を蓄えている最上段を切り取る。蜂といっても魔物である。普通の蜂よりも格段に大きく人間の前腕ほどの大きさがある。その蜂が巣を作れば強固で巨大な巣が出来上がる。巣の一部を切り取れば十分な蜂蜜が取れるのである。
蜂蜜をDCで交換した壺に入れていく。壺は片手で持てるほどの小さいものだ。十個ほど詰めたところで拡張鞄にしまい、蜂に感謝の言葉を述べ開は戻った。
拡張鞄は鞄内の空間を拡張している鞄だ。その見た目よりも大容量で誰もが欲しがる物である。
「商人だから戦うわけじゃないが護衛は必要だな。俺が戦うとコストがかかってしょうがない。ただ魔物を連れていくと騒ぎにはなるだろう...いや、待てよ。確かスキルに魔物使いがあったな」
開は迷宮のスキル交換欄を見る。
魔物使い
魔物を使役し、己が代わりに戦わせることができる。使役するには魔物に自身を認めさせることが条件。
「ゴブリンを護衛に連れて行くか。魔物使いといえば疑われることはないだろう」
現状の戦力で怪しまれないギリギリの線を攻めつつ安全性を高めていく。
「後はゴブリンにスキルと新しい鎧をつけさせておくか。今のDCならば問題ない」
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名前:
種族: ゴブリン
Lv: 8
HP: 132/132
MP: 1/1
物攻: 40
物防: 20
魔攻: 1
魔防: 1
敏捷: 8
知力: 4
器用: 6
スキル
剣術lv2
魔法
固有能力
称号
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スキルも安いものではないが、レベルが低く標準的なスキルならば手が届かないことはない。更に余計な混乱を避けるためにゴブリンを鉄の鎧で包んだ。全身甲冑ではないが新しい装備を人間のようにきちんと着けていれば野生ではないと分かるだろう。
「冒険者がくる方向は分かっている。いざ出発だ」
やはり地下の生活は何だかんだで負担をかけていたのだろう。開の足取りは軽かった。




