3日目:扱いひどくね?
■――勇者?従者?――
「って、そんなわけないでしょ!!」
この前の続きです。
「いや、違うだろ」
「そうじゃな」
「ちょっと、そう感じてるの私だけ?!」
ロイスは適当にあしらって、イスに座りなおす。
(このじいさん・・・)
ロイスは、微妙に含み笑いでパナムを見ているガルトを不信な目で見つめていた。
(気づいて・・・るよな・・・)
ロイスは、戸惑っているパナムを横目にロイスは立ち上がり玄関の扉に手をかけた。
「ん?」
「「どうした?」」
「なんか、外から歓声が聞こえるんだけど?」
「え?」
「そんな事は、無かったようじゃったが・・・」
そういって、ガルムはロイスを押しのけて扉を開けた。
「「「「ワーーー!!」」」」
扉を開けると、雪の中、寒さ対策をしまくった人々が列を作って歓声を上げていた。
「なんじゃこれは・・・」
ガルムが驚きながら道端にいる男に話を聞いていた。
すると、パナムは気だるそうな目をしてロイスを見つめた。
「本当に勇者じゃないのよね・・・」
「あー・・・違う違う」
適当に答える勇者だった。
「で、これはなんなの?」
「知らない」
さっきから歓声が上がりっぱなしの集団を冷えた目で見つめる二人であった。
「めずらしい、こともあるもんじゃのう」
とガルトが、情報収集を終えて戻ってきた。
「どうだったんだ?じいさん」
「めずらしく、ここを王族が通るらしいのだ」
「王族が?」
王族とは、要するに王様の家系の人なのであった。
「めずらしいわね、雪でも、って降ってるか」
「そうだな。パターンどうりの台詞ありがとう。パナムさん」
「う、うるさい。変態」
そんな二人を、鬱陶しそうに手で払いガルムは、
急に歓声が大きくなった方向を指差し、
「ほれ、来たぞ」
と、興味なさげに言った。
「わぁ」
パナムが思わず声を上げたのも無理はない。
それほど、豪華な集団だった。白い服を身にまとった騎士団がゆっくりと歩いていく。
「ほう、結構な騎士団だな」
「そりゃあ、王族じゃからの」
ロイスはそれを聞くやいなや、軽く大地を蹴って高く上に上がった。
あっけにとられていた、二人に、
「ちょっくら、見てくる」
と告げて、ロイスは観客の一番前に躍り出た。
「さて、どこの王族かな?」
ロイスは目をこらしてその戦隊が通りすぎるのを見守った。
そんな時、ふと視界の隅に見慣れたような人物を見たような気がした。
「あ・・・・、気のせいだよな。まさか、クロエスの軍団ってことは・・・」
そうつぶやいた時、後ろにただならぬ殺気を感じて、ロイスは振り返った。
「全くあいつ、なんなの、やっぱり只者じゃないわよね」
「そうじゃな、あいつはたぶん勇者じゃろうから」
「は?」
パナムは、ガルムの言葉を聞きすばやく反応した。
「おじいちゃん、やっぱり分かってたんじゃない!!」
「ほっほっほっ、そんなのも見抜けぬとは。まだまだじゃな」
「っていうか、おじいちゃん騙してたでしょ!!」
怒りながら、パナムは今までの勇者像と今のロイスを比較し、
「はぁーー」
大きく肩を、落とした。
「まあ、そんなに気を落とすな。あの者は、強い。
あの面だけが奴の本質ではないであろうしな」
「うん」
ことごとく、人の心を読むのが得意なガルムだった。
「ところで・・・」
とパナムが話を切り出そうとしたとき、
「ぎゃあああああああああああ!!」
と、この世のものとも思えない叫び声が・・・。
「今のって、ロイスのよね」
「・・・そのように聞こえたが」
二人は、ざわついている人ごみの中に向かって、叫び声の主を探しに行った。