第9 人と違う不幸
「暑い」
「望日さんが離れたら良いと思う」
「コウさんが離れたら良いと思う」
相変わらずのくっつき具合は今の季節だと特に辛い。例年よりも遥かに暑いこの季節。イライラして来た。
「仲良くしない人嫌い」
「コウさん大好き!」
「望日さん愛してる!」
「他所でやれ」
と言った感じでいつにより騒がしさとウザさが2倍増しで私は地獄のような苦労をしている。
「ちょっとお手洗い」
「「私もっ!!」」
「来るな!!!」
体力が持たない。唯一の自分の時間も望日が家に居るせいでなくなってしまったし。今はこうしてトイレで自分の時間を確保して居る。迷惑な話だ。あの教室にはヤバイ奴しか居ねえのか?
「あ、おかえり!!」
戻って来たらこれだ。別の意味でモテ期が尋常じゃない程到来して居る。
「暑い。くっ付かないで」
「「やだ!」」
最悪なことに、こいつらには不幸が効かない。いつもならそれで処理出来ることでもヤバイ奴しか居ないこのクラスでは簡単にはいかない。
「席に着け!授業始めるぞ!!」
「うわ、私の休み時間が...」
不幸だ。今世紀最大の不幸が自分に降りかかって来ている。人に不幸をぶつけ過ぎたせいだ。しかも、私が不幸になるって事は周りに幸運が訪れるってことで、尋常じゃない幸運が周りに降りそそがれることになる。
「ん?宝くじ落ちてる」
「マジで?当たってる?」
「うわっ!?1等だ!!5億だ!!!!!」
「マジで!?」
「先生!!宝くじ当たりました!!!」
「すげえええええええ!!!!!」
うるせえよ。なんで先生まではしゃいでるんだよ!!
「今日は気分が良いから課題無しだ!!!」
「やったああああああああ!!!」
どんちゃん騒ぎの教室。静かな時間が好きな私からしたら地獄だ。その分不幸になるから周りからすれば幸運の連鎖、フィーバー状態だ。
「おい望月!!お前も騒げ!!!」
「ちっ...」
こんな雑魚私の不幸で沈めてやる。
「あれ?財布失くした。まあ良いや!!!踊れ!!!!!!!」
「なっ!?」
ただのモブのくせに効かないだと!?どうすることも出来ないこの状況。まさに絶望的だ。
「帰りたい...」
あの日、私の大好きだった平凡は跡形もなく消え去った。
「もう、どうでも良いや...」
いつの日かの謎の胴上げに巻き込まれた私は再び考えることをやめた。