4話 人と違う幸福
「どうしたの?機嫌悪い?」
「別に。てか重い」
絶好のチャンスが絶望のトラップだったとは...気になってむやみに吸えなくなっちゃった。
「はぁ〜」
「やっぱり機嫌悪いよね?」
気になるのが、送った不幸が帰ってきたことが1番の驚きだ。なんだあれ?今まであんなこと起きたことなかったのに。帰って来た不幸は自分に災厄をもたらすし。
「はぁ〜〜」
「よく分からないけど、取り敢えず幸福を祈るね」
「それネタに聞こえない」
お祈りをするポーズをする。普通なら笑って突っ込めるけど、コウちゃんの場合本当にご利益があるから怖い。
「どうした!?元気無いな!!熱くなれよ!!!」
「おい幸福はどこ行った」
「もっと熱くなれよ!!気持ちの問題だ!!!君なら出来る!!!!ぐわっ!?」
うわぁ〜痛そう。顔から派手に転んだ。
「うぅ〜痛い...」
「えっ!?泣いてるの?」
こいつの弱々しい姿を初めて見た。なんかめっちゃ女の子っぽく泣いてるし。やばっ可愛く見えてきた。
「痛い...蒼ちゃん...」
「はいはい。転んだの?痛かったね」
「うん...痛かった...」
「我慢したね。えらいえらい」
「えへへ〜」
抱きしめて頭を撫でてる姿は仲のいい姉妹にしか見えない。人は見かけによらないなぁ。
「騒がせてしまったね。失礼するよ」
手を引っ張って連れて行く後ろ姿を見届けた。
「これは...幸福なのか?」
「じゃあ、全力で祈っちゃうよ!!ん〜〜〜!!」
全力で祈るポーズをするコウちゃんは自分の力に気付いていない。
「うわっ!幼馴染からもらった指輪無くした...」
「マジかよ。留年の可能性ありって...」
「もう、死にたい」
「コウちゃん。ストップ」
「へ?」
私の幸福は人の絶望を吸い取ること。すなわち、私の幸福度が上がるにつれて人の絶望度が上がってしまう。すると、絶望の限界を越えた先には死が訪れることを私は知っていた。
「これ以上したら教室が血に染まる」
「何言ってるの?面白いこと言うね」
これだから無自覚は怖いんだ。
「あ!指輪あった!!」
「あれ?成績は真ん中だから留年するはず無いのに。良かった〜!!!」
「この世界も案外素晴らしいかもな」
なんだこの希望に満ち溢れた教室は。なんか後光が見えるぞ。生命の喜びとエネルギーが光って見える。
「お〜い!席に着け!」
「「「先生!おはようございます!!いつもありがとうございます!!!」」」
そうか、幸せは人に移るんだ。
「お前ら...よ〜しっ!!!俺がお前らの為に全力を尽くすぞ!!!命を懸けて育てあげるぞ!!!」
「先生!健康第一ですよ!!」
「先生凄い!!」
「私たちの誇りです!!!」
「お前ら...」
いつのドラマだよ。何だよこれ?胸熱とか通り越してなんか暑苦しい。暑苦しい?あ...
「もっと熱くなれる!!!!私たちは一丸となって成長できる!!!!!」
「「「うぉおおおおおおお!!!!!」」」
「うわっ!?熱っ!!」
熱波がこっちに飛んでくる。火の粉みたいなのも飛んでくる。最悪だ。なんかよく分からない昭和のドラマみたいな感じになっちゃった。なんか光と炎が教室中を包み込んでカオスな状態になってる。
「なんか良いね。こう言うの」
「私は嫌だよ。って眩しっ!?」
天からのお迎えぐらいの光がコウちゃんから放たれている。天からお迎えが来たことないから分かんないけど。
「もうやだ。このクラス...」
「よ〜しっ!!行くぞ!!!」
「「「わーっしょいっ!!わーっしょいっ!!!」」」
謎の胴上げに巻き込まれた私は考えることをやめた。