岬の恋のキューピッドには、なれない
「ちょ、葵!青井さん!どこ行ってたのさ!」
「何よ蒼?」
「何かあったの?」
同時にそう言う葵と岬を見て、蒼は笑った。
「2人仲良くなったんだね。そう、そうだ!愛生先輩が、あの・・・」
「愛生先輩がどうかしたの?」
岬は積極的に蒼に話しかけている。・・・やっぱり好きなんだろう、葵は思った。
「愛生先輩が、帰ってこないんだ。トイレ行くって言って、そのまま・・・」
「女子のトイレなんて長いものじゃないの?」
「え、そうなの・・・?でで、でもさ、そんなもんじゃなくない?」
「どれくらいたった?」
「葵が青井さんとどっかいく同じ時に行っちゃったからな・・・」
岬は走り出した。
「ちょっ、岬ちゃん!」
「青井さん!?」
葵と蒼も、あわてて岬を追いかける。
「愛生先輩っ、愛生先ぱぁい!!」
「あの・・・岬ちゃん、どうして・・・」
葵の質問に、岬は答えた。
「決まってるでしょ、私、愛生先輩に負けたくないの」
「ま・・・負けたくないって?」
「愛生先輩を探して、蒼くんの私の好感度を上げてくのっ!愛生先輩には負けたくない!」
岬がそう叫んだ先に・・・
「葵ちゃん?あ・・・あと・・・えと・・・・・・・・」
「私は青井岬。岬って呼んでください」
岬は堂々と言った。
「・・・・・岬・・・さん」
「大丈夫だったんですか?」
愛生先輩はうつむいた。
「少し、・・・おなかが痛くなって」
「えっ、大丈夫ですか?」
岬をさえぎって葵は尋ねた。
「うん・・・ありがとう・・・。葵ちゃん、岬さん」
愛生先輩は岬を、苦手な感じで見つめた。
「愛生先輩、あなた、蒼くんのこと好きですか?」
「・・・!?いややっ、まっさかっ・・・」
「あ、よかった。なら私、蒼くんを彼氏にしますから!」
「・・・・・はぁぁぁっ!?!?」
声を上げたのは、愛生先輩・・・じゃなくて葵だった。
「岬ちゃん。あのね、蒼は―――――――」
「蒼くんの気持ちがどうとか、関係ない。青井岬っ、あおいとして、蒼くんを振り向かせて見せますから!」
「ちょ・・・岬ちゃん」
・・・私今度は、岬ちゃんとも、かかわりたくなくなっちゃうよ?
葵はそう思った。
だって今、ただでさえ、愛生先輩を見ているのが苦しくてたまらないんだよ。
岬ちゃん・・・
「葵ちゃん。自分の気持ちがあるなら、私みたいに、ちゃんと言わなきゃ、伝わらないんだよ」
・・・岬は葵の気持ちが分かっているかのように、耳元でそうつぶやいたのだった。
「え?」