Wデートは、失恋の予感?
「やっほー、葵に蒼!林田くんも」
「奏楽!おはよ」「奏楽誘ってくれてありがとう!」「よー、高柳」
奏楽の声で振り向いた葵と蒼と林田は、プールに向かって歩き出した。
「いい?葵。今日こそ、絶対、蒼くんとの距離を縮めてね」
「縮めるって何よ」
「何?何って?それはもちろんラブのほうの距離を――――――――」
「もう言わなくていい!」
葵がプイっと横を向くと、奏楽は「もー、すぐすねてー」と言った。
「え、奏楽・・・ビキニなの?」
「え・・・まあ、そりゃ一応、デートだし」
「すごい」
葵はそもそもビキニというものが売っている場所にすら行ったこともない。
「まあ、そうだろうと思って・・・」
「おーい、女子はおせーぞ」
「林田、まあ女子にはいろいろあるだろうし」
そう言って蒼が笑うと、林田は突然聞いた。
「お前って、道川のこと好き?」
「え?あ、葵っ!?」
蒼は一気に顔を真っ赤にした。
「んなわけ!俺は・・・」
その時。
「待たせて、ごめんね」
奏楽の声が響いた。
「え・・・高柳も道川も、ビキニ?」
「・・・ダメだった?」
「・・・いや」
「葵・・・」
蒼は声を発した。
「・・・蒼っ、え?なんかダメだった?え、じゃあ今すぐ着替えてくる・・・」
「・・・別にいいよっ、ダイジョブだって」
「ありがとう・・・」
突然、蒼は葵に近づいてきた。
「後で相談があるんだけど、いいかな?」
「え、別にいいけど・・・」
「プール!プール!久しぶりのプール!」
奏楽は大興奮している。
「いや、奏楽何がそんなに楽しいの?まだ、足もつけてないよ?」
「だって!ねえそんなことより、誰か一緒に、2人乗りのスライダーのろ!」
「・・・私はいいけど、でもさ・・・ここはやっぱり、彼氏さんとね、いくべきでは」
「え!?奏楽と林田・・・え!?」
「そういえば伝えてなかったね。蒼」
「なんで教えてくれなかったんだよぉ!」
「笑だわー、じゃあうちら、いってくるね」
奏楽がそう言っていってしまうと、蒼はさっきの話題を切り出した。
「あの・・・相談ってのは」
「うん、何?」
「・・・俺好きな人がいるんだ」
「・・・そうなんだ」
ガツンと頭殴られたような気分になった。
蒼の好きな人・・・それは『あおい』なの?どっちのあおいなの?ここにいるあおい?それとも・・・
「誰?」
「・・・絶対言うなよ誰にも」
蒼は声をひそめた。
「・・・愛生先輩」
葵は今度こそ本当に、頭が痛くなった。
「だと思った、バレッバレ」
「え!うそ!」
「ほんとだよ。ねえていうかうちらも行こ!」
「え!?あのまだ、相談てのは終わってな・・・」
「蒼の好きな人聞けたから満足でーす!ほら行くよ」
「・・・まいいや!行こ!」
葵はほっとした。
もうこれ以上、恋の話はしたくない。・・・失恋したから。