愛生先輩はコミュ障でした
「風間、江崎。結構そこ、いいペアになってきたな」
カンコンカンコンカンコン・・・
いい音が響いていて、顧問の先生はうんうんとうなずいた。
「・・・あ、あの・・・あ、蒼・・・。・・・あ、りがと・・・う・・・・」
「?いえいえ、全然!大丈夫ですよ」
蒼の笑顔に、愛生先輩はますます緊張が解けていっているようだった。
「・・・葵、ちゃん」
「え?」
「ちょ・・・と、来て」
手を引っ張られ、葵はびっくりした。
「なんですか?」
「・・・蒼くんのこと・・・す、・・・好きですか?」
「え・・・あ・・・・・・・ッなわけ」
「・・・それなら、よかった」
愛生先輩はほっとしたように笑った。
「・・・愛生先輩?」
「あ・・・あの・・・わ、私。小さいころ、・・・幼稚園で・・・・・・蒼、と、一緒だったんです」
葵は愛生先輩を見つめた。
「・・・幼稚園って、いつ・・・」
「・・・・・年中のはじめだけです・・・。年中になって・・・すぐ、・・・引っ越して、しまった・・・ので」
「ああ・・・」
・・・葵は何を言いたいのか、少しだけわかってきた。
「・・・愛生先輩・・・」
「・・・わわ、私。葵ちゃん・・・・・が、そう・・・。あれ、なら、いいんです・・でも、・・・」
「愛生先輩、戻りましょう。蒼も待ってると思うし」
葵は慌てるように愛生先輩の話を止めた。
・・・これ以上話を聞かない方がいいと思ったから。
「あっ、葵ー!ねえ、俺と練習して!」
「・・・蒼?」
葵はちらりと愛生先輩のほうを見た。
愛生先輩は黙っている。
「・・・うん!練習、しよう」
葵が言うと、蒼は嬉しそうに笑った。
「・・・それはやっぱり、好きなんじゃないの?」
「・・・やっぱそうだよねえ・・・」
葵と歩いているのは、親友、高柳奏楽だ。
「だって、幼稚園の頃ちょっとだけ仲良くて、今もずっと好き。なのに葵みたいなかわいい子が仲良くしてて、ヤキモチ焼いたんじゃないの?」
「え!?・・・だって、奏楽。ヤキモチ焼いてるのは、私のほうだと思うの。蒼と愛生先輩が仲いいから・・・」
奏楽は葵の本心を知っている。奏楽は葵の一番の親友だから。
「・・・まあそうかもしれないけど。・・・あっ!ねえ、そういえばさ」
その時。
キーンコーンカーンコーン・・・。
「あ、鐘なっちゃった。ごめん、また明日!」
「あ、うん!じゃーね、奏楽!」
葵は奏楽に別れを告げると、家へと帰っていった。