お嬢様の戯言
パーティの後動物たちと暖かいココアを飲みながら、いつまでもいつまでもおしゃべりをしていた。テーブルの真ん中で揺れる蝋燭の灯りがだんだんとみんなの眠気を誘っていた。
「さぁ、お嬢様そろそろお開きにしましょうか」
ノワールは二回手を叩くと動物たちが目を覚まし、手に手土産をぶら下げて玄関のドアから次々とおうちへ帰宅した。
「まだよ。まだなのよ。ノワール……だって、まだ……招待した人が足りないもの……」
ノワールはお嬢様の肩に毛布をかけ、うとうとと目を閉じたり開いたりするその瞼にそっと手を当てた。
「後は私が待ちましょう。もし、お嬢様が眠られている間にいらっしゃいましたら、私が代わりにプレゼントを受け取っておきます。ですので……もう、今日は休むことにいたしましょうか……」
如月お嬢様はこくりと頷くと、ノワールの首に両手を伸ばし抱きついた。
「はいはい、ベッドまでお運びいたします」
ノワールは如月お嬢様をお姫様抱っこして奥の寝室へと運ぶ。寝室の部屋の灯りをつけるとベッドには大切な人と移った写真が飾ってあった。
如月お嬢様は寝言なのか、本心なのか、ゆっくりと口を開き、独り言を言う。閉じられた瞳からは涙が頬を伝って溢れていた。
ノワールが暖かいベッドへお嬢様の体を運ぶと毛布を肩までかけてあげた。
「ノワールがおります。私がお二人の代わりに、如月お嬢様の成長を見守り続けましょう。私はお嬢様に救われた猫。一切飼い主に爪を立てることはありません。」
首元の鈴のついたチョーカーを握りしめお嬢様の頭を撫でる。
「飼い猫なのでどこかへ行くことはありません。私のおうちはお嬢様の側なのです。私がずっと……お側に……」
お嬢様の片方の手を毛布から出し、両手で握りしめる。指を自分の指に絡めるようにぎゅっと握りしめた。薬指に軽くキスする。
すると玄関のドアを叩かく音が聞こえる。
こんな夜遅くにーー……。