大きな誕生日ケーキ
テーブルの中央、お嬢様の目の前に大きなケーキが置かれる。一番下がタルトで出来ておりふわふわのスポンジとスポンジの間にイチゴと生クリームが挟んであり、一番上には生クリームでコーティングされた上にイチゴジャムがのっていてぎっしりとイチゴが並ぶ。所々にミントの葉が飾ってあった。
ノワールが右手の親指と中指を重ねて軽く滑らせる。パチンと音がすると同時に部屋の灯りが消えた。
「こちらのケーキに蝋燭をさしてしまうのは勿体ありませんから……」
右手を軽く閉じ、星を握りしめる。
人差し指だけ立てると指先から七色の光が溢れ出した。
「happybirthday kisaragiprincess」
「さぁ、ゆっくり口から息を吐いてこの文字を消してください」
動物たちがごくりと唾をのみ、その仕草をまじまじと凝視する。如月お嬢様は言われるがまま、目の前にかかれた文字にゆっくりと息をかけた。すると、息がかかった所から先ほどの文字は消え「very happy year to come」という文字が現れる。
「十二歳のお誕生日おめでとうございます。この一年もお嬢様にとってとても幸せな一年になりますように……」
「「おめでとうーー!」」
みんなのおめでとうという言葉とともにいくつものクラッカーが鳴り、部屋の灯りがついた。すると驚いたことに六匹たちのどうぶつたちだけだと思っていたが、色とりどりのバルーンを持つくまやクラッカーやテープリボンを持っている小鳥たち。口にお花のブーケが入ったかごをくわえた羊。他にもアヒルやカルガモたちがそれぞれお祝いの品を持ってテーブルの周りに集まっていた。
「さぁ、お嬢様。ケーキもいただくとしましょうか」
ノワールは一番大きくて、美味しそうなイチゴを選び生クリームをつけてお嬢様の口元に運んだ。イチゴが甘酸っぱくて、口の中で生クリームがとろける。差し出したフォークのイチゴをいつもは文句をいいながら、嫌がるお嬢様が嫌がらずに食べてくれたので、今回のパーティは成功だったのだとノワールは嬉しくなって微笑んだ。