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ヒロインらしくデート

  デートを約束した日曜日・・・


「おまたせ。岸辺くん。」

  須賀みかの家の前で俺は待っていた。

  ちょこん、と俺の前にやって来て礼をする150㎝の小柄な彼女は、170㎝そこそこの俺と肩を並べてみてもとても小さく思えた。



  帰ってすぐ、原作の小説を読んだのもあって、あの日、何故、「原作のデートを再現してみよう」という俺の提案に、スガちゃんが慌てるそぶりをしたのかは大体想像出来たのだが…

  まあ、それを含め、今日のデートに緊張するが、出来るだけフラットに、いつもと同じように話そうと心掛けようとしていた。


  「日曜日は、声優のお仕事ってお休み? 」

  「うん、お休みだよ。平日しか開いてないスタジオで収録してるから。」

  「へえ、学校終わった後に行ってたのか。すごいな、スガちゃんはっ! 」

  「好きなことをやっているんだし、放課後みんなが部活動に励んでるのと同じことだよ。」

  「プロとしてやっているんだから、色々と疲れるんじゃない?」

  「それなりに・・・かな。でも、全校生徒の前で堂々とお芝居してる岸辺くんの方が凄いなって思うな、わたしは。」


  白と水色のふんわりとしたシルエットのワンピースに、いつもと違い長い黒髪を下ろしている。こう見ると可愛らしく、流石テレビに顔出しもしている声優アイドルといった感じだ。

  それにクラスメイトの私服はなかなか見ることがないから、新鮮だな、と思っているともう一つ、いつもと違うことに気付いた。


  「スガちゃん、声、いつもよりワントーン高いと言うか・・アニメのキャラ意識してる?」

  「あ、うん。台本の練習も兼ねて今日は遊ぼうかなって! 」

  やっぱり、須賀みかは根は真面目でしっかり声優のプロとして責任感があるんだな。でも今日は・・


  「いや、今日のデートは地声で行こうぜ。スガちゃん!演技において気持ち作りをするためのデートなんだから。普段通りのスガちゃんが、今俺とデートをしているってことで!今日は行こう!」

  「・・・岸辺くん、結構、チャラいんだね・・」


  俺が“デート”を連呼したせいで、困ったような恥ずかしそうな顔をしたスガちゃんが居た。新人声優アイドル須賀みかの演技力を上げるために今日のデートに付き合っているといえ、こっちだって緊張している。余裕ある風を装っているに過ぎない。

  スガちゃんが、俺に相談してきて頼ってきてくれた分、俺には責任がある。だから俺は一層気合いを入れることにした。このデートを『演技そのもの』だと思えば、全然行ける気がした。


  「じゃあ、行こうか。スガちゃん。そうだ、一つ意識してもらいたい。

  ・・俺を、好きな人だと思って。」


  そんな台詞がいつの間にか口から飛び出してきて、そしてスガちゃんの手を握った。そして手を繋いでそのまま歩き出した。我ながら大胆行動・・演技だと思えば怖いもの無しに思えてしまう俺って凄いと思ってしまった。






  ━━━『 俺を、好きな人だと思って。』

  岸辺くんにそう言われて手を繋いで歩き出した時、頭が真っ白になった。

  やっぱり、凄いよ。岸辺くん。

  普段クラスで見る時なんかは、そんながっついてるタイプでも自分から行動を起こすタイプでもない感じで特に目立たない感じの男子なのに。


  わたしは、学校の舞台発表で岸辺くんが役者として立ってるのを初めて見た時・・・

  その演じてる姿を見て、凄いと思った。

  そして、普段から考えられないような雰囲気をその演じてる時には出していて、どんな気持ちでいたらそうなれるのかを気になった。

 

  舞台で演じてる岸辺くんを見て、わたしは岸辺くんの事が、好きになった。


  だから、私の好きな人は・・・岸辺勇人くん。

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