表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

声優のお仕事

  須賀みかの家に招待された。二階建ての一軒家で玄関へ入るとそのまま部屋へ通された。


  普段のスガちゃんから、ピンク色の家具やぬいぐるみが沢山ある部屋を想像していたが、意外にも大人っぽい本棚とベッド、テレビが置いてあるだけだった。

  部屋の中央に、小動物みたいな体型の女の子須賀みかはちょこんと正座して座る。俺はその隣に座った。

  「取り敢えず、観て。」


  彼女はリモコンで操作をし、録画されたビデオ欄から

  「クノイチを彼女にするデメリット 1話」

  を選ぶ。現在彼女が声優をやっているというアニメだ。


  須賀みかは恥ずかしいのか、あまり知り合いに観られたことがないのか俺の様子を横からちらちら伺っている。


  俺はわくわくしながら再生されるのを待つ・・深夜アニメはあまり観ないけど、まさかクラスメイトが声をやっているなんてわくわくするな。


「「お兄ちゃん〜! 早くしないとバス間に合わないー!」」

  ポニーテールの女子高生が出て来て叫んでいる。如何にも、深夜アニメと言ったような萌え萌え系のキャラクターだ。大きなお友達が好きそうなエロ可愛い(?)男のロマンが詰まったような女の子のキャラクターだ。


  ひょっとして、早速このキャラクターがスガちゃんがやってるヒロインなのかな?と思い、横を見ると恥ずかしそうにしていたので、そうだと確信した。

  普段のスガちゃんの話す声より、少し高いトーンかな? アニメの映像とマッチしてて、とても自然だった。

  「「もうっっ、お兄ちゃんったら、えっち!」」

  如何にも大人向けアニメらしい描写で、自然と顔がニヤけていた。


  第1話は、妹が本当の正体であるクノイチに変身したところで終わった。アニメのエンディングが始まったタイミングで、隣に座っているスガちゃんに身体を向けた。

  「スガちゃん、声優ハマってるね!やっぱ、プロだわ、凄いな!」

  「・・わわわ、あ、あ、ありがとう。プロとしては演技とかまだまだだけど。」

  「いつから声優やってたんだ? あ、デビューしたのはこの作品でだっけ?」

  「・・あ、うん。初めてオーディション受かって、この作品でデ・・ビュ・・・」

  スガちゃんの身体が突然硬直した。テレビを見て固まっている。

  エンディングが終わってCMに入っていたのだが、テレビの画面には見知った人物が出ていた。


  なんと、スガちゃんだった。ドアップでウインクしてノリノリになって踊っている。こんなスガちゃん、学校で見たことがない。

  髪型をポニーテールにして、黒装束のクノイチの衣装で

  「「クノイチらしく隠密にって言うけれど〜♪ だってだって♪だいすきなんだもん♪お兄ちゃん〜♪」」

  高音のアニメ声で、まさにアイドルと言ったようなショートPVだった。少々露出のあるクノイチのコスプレでこっちはドキドキするが・・

  「「デビューシングル、「クノイチを彼女にするデメリット」エンディングテーマ!

  須賀みか『君だけのクノイチ』発売ー!」」


  まさか、さっきは気付かなかったがアニメのエンディングの曲を歌っていたなんて。もう一度確認しなきゃだな。


  俺はリモコンを手に取り、巻き戻しボタンを押した。さっきのCMの前まで戻って、再生ボタンを押そうとして・・・さっきまで硬直していた須賀みかが我に返り、俺に向かって飛びかかってきた。

  「だめーー!もう見ないでえええ!」

  顔を真っ赤にして恥ずかしそうだ。どうやらテレビの顔出しは見せたくなかったみたいだ。

  須賀みかをスッと避けたが、リモコンを手から離してしまった。数メートル前にあるリモコンにまた手を伸ばそうとすると、気付いた須賀みかが、

  「また再生しちゃ、だめぇ・・・」

 


  上から体重をかけられ、俺は床に伏せた状態になる。その瞬間、同時に背中全体にムギュッと柔らかい感覚が・・・


  「恥ずかしいから、もうだめ・・ 岸辺くん・・」

  俺の上に乗っかり、耳元で生暖かい吐息まじりの声に身体全体がぞわっとする。完全にスガちゃんに背中を取られている。この状況、色々な意味でいけない気がした俺は降参することにした。

  「わ、わかったから。スガちゃん。もう再生しないから・・・な?」


  須賀みかは俺から身体を離し、リモコンを念のためか奪っておいている。

  俺はさっきの身体を密着された感覚のせいで、頭がもやもやしていた。そんな俺の状態も知らず、須賀みかは真剣な表情で俺に向かって言った。


  「わたしね、岸辺くんに、相談があって家に呼んだんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ