二人で幸せ
ひだまり童話館「開館2周年記念祭」お題『2の話』参加作品です。
とある森の中には大勢の動物が住んでいました。皆仲良しで隣近所ではよく井戸端会議が行われていました。そんなところに話題にあがった動物がいました。
「最近うさぎの幸子ちゃんを見かけないわね」
「そうね。どうしてるのかしら。心配ね。私帰りに寄ってみるわ」
「お願いね」
こうしてねずみのねず子さんが幸子ちゃんの家へやって来ました。
トントン
「幸子ちゃん、いる?」
カチャ
「ねず子さん、こんにちは……」
「幸子ちゃん、どうしたの、その顔!目の下にくまができてるわよ!」
「最近眠れなくて……」
「何か悩み事でもあるの?」
ねずみのねず子さんが聞いたら、幸子ちゃんは泣き出しました。
「私、好きな人がいるの……。でも言えなくて……」
それを聞いたねず子さんは急に張り切り出しました。
「そういうことなら任せて!私の得意分野よ!それで誰が好きなの?」
「……狐のつね太さん……」
幸子ちゃんは小さな声で呟きました。
「わかったわ!任せて!」
「でも、恥ずかしい……」
と、幸子ちゃんの呟きも聞かずに、ねず子さんは走り出していました。もちろん井戸端会議の議題にするためです。
「幸子ちゃんが元気のない訳がわかったわよ!」
ねず子さんは皆に話しました。
「それは力になってあげないとね!」
全員一致の言葉でした。さあ、二人をなんとか引き合わせないといけません。皆で作戦を考えました。
まずは男同士。つね太さんの隣に住んでいる熊のくま次郎さんに話しに行きました。くま次郎さんはその話を聞いて、なんとかしようと言ってくれました。
くま次郎さんはつね太さんの家にぶどう酒を持って訪ねて行くことにしました。
「つね太くん、いっぱい飲まないかい?」
「くま次郎さん、もちろんいいですよ」
二人はお酒を飲み始めました。くま次郎さんは、どうやって幸子ちゃんのことを話そうかと考えていました。
「つね太くんは好きな人はいるのかい?」
「な、なんですか、突然!」
しかし、つね太さんの頬が赤くなってきました。お酒のせいだけではなさそうです。
「誰なんだい?」
「……うさぎの幸子ちゃん……」
なんと、二人は両想いでした。それを聞いたくま次郎さんは喜びました。そしてあることを思い付きました。早速報告会です。ねず子さんへ二人が両想いであることを話しました。そして自分の計画も。
それから森の中はあわただしくなりました。「二人を幸せにする会」を作り、皆で話し合いました。
「……うん。それで……」
「……こうしたら……」
皆で意見を出し合いました。そして準備です。
全ての準備が終わった時、森中の動物たちが集まってきました。そして、それぞれ座りました。
そこへ現れたのは、つね太さんと幸子ちゃんでした。つね夫太さんはタキシードを、幸子ちゃんは花嫁衣装を着ていました。そしてお互いが対面しました。二人は真っ赤です。
森の皆で計画していたのは二人の結婚式でした。二人は驚きながらも、嬉しくて祭壇へ向かいました。そこに神父さんがいました。
ここでもびっくりです。神父役はひだまり童話館のタマ館長だったのです。タマ館長は動物が大好きです。だから二人の幸せを願ってやって来てくれたのです。
二人はタマ館長の前で誓いの言葉を口にしました。森の皆からは拍手が響きわたりました。
さあ、誓いのキス……とまではいきませんでした。二人は手を繋ぐのがやっとでした。
皆に祝福されて新婚の二人は新しい家へ引っ越しました。新しい家も皆が準備してくれていたのです。二人は皆にお礼を言うと、家へ入って行きました。
その後どうしたかって?もちろん二人は末長く幸せに暮らしましたとさ。
<おしまい>