小手調べ
まだまだ悪い所はあると思いますが
お許しください
「はむはむはむはむ・・・・」
急すぎるかもしれないが、今は飯の時間だ。
なにげによく食べる方だと思う。
「す、すごい食べるね」
コノエが驚いた顔でこちらを見ていた。
「ま、特訓するためにはまず食わねえとな。んで休憩。で特訓。みたいなながれだな」
「へ、へぇ・・。と、ところで太志が言うには選ばれた人は優れてるって事なんだよね?」
「ま、そうなるよな」
コノエの目が一気にこちらを悲しそうな目で見てきた。
「なんだよ。何かおかしい事でも言ったか?」
「太志って何か出来るの?」
こうなるのは地球にいる時でもあった。
生まれつき貧弱な体つきで、とてもじゃないが『強い』とは感じれないほうが正しいだろう。よって、この反応をするコノエは正常である、と証明したところで何も変わらないが。
「出来ない事はない・・一応な」
「でもその身体でグンタイ?に入れたんだから相当ギャップがあったのね」
「今、失礼だと思われる発言が」
「それで!それで!何が出来るの?」
コノエは俺の言葉など聞かず、俺の出来る事についてしか気にも留めていなかった。
「武道だ」
「ブドウ?地球にあるって昨日言ってたやつ?」
「いや、言い方が間違っていた。素手で闘うんだ」
「え!武器とか使わないの?」
「俺は『神崎流武術―弐式』って言うのを・・・・なんて説明すりゃいいんだ?」
『神崎流武術―弐式』これは、俺の爺さんが地球にいた時に四歳の頃から教わっていた武術。武器は使用せず、素手で技を出して闘うものだ。
「へぇー」
コノエは不思議な顔をしないで太志を見ていた。
「な、なんだよ」
「じゃ、私と闘おう!」
「は?」
* * * * * * * * * *
「じゃ、ルールは相手を気絶させたらでいいのか?」
「私の場合は武器使うから寸止めね」
コノエは剣を使うと言うので、しかたなく相手をすることにした。
「手加減はいらないわ!」
「随分と余裕だな。なら、思いっきりいくぞ!」
そう言って太志はコインを弾いた。地面に着いたらスタート。
「・・・・」
「・・・・」
キィイン。
「ふあ!」
コノエが素早くこちらに近付き、剣を振り下ろした。
「っく!」
最初は避けてから始まった。その一撃は、まるで剣になれているかのような手つきで、容赦ない一撃だった。
まずは、間合いをとってこちらのペースに流れを作るしかないな。
太志は軽い足取りで勢いよく地面を蹴り、距離をとった。
「今度はこっちからいくぞ!」
太志は右腕を前に出し、左手を腰に置き、足は前後に開いて、目を閉じた。
「目を閉じるなんて大馬鹿さんですね!もらいました!」
その直後、太志は目を開けて――
「神崎流武術――弐式ぃ!『豪・烈火棍』!!」
そして、瞬間の速さで炎の燃え上がった拳をコノエのみぞおちに叩きこんだ。
「うぐ!」
だが、しっかりと入った気はしなかった。コノエはあの瞬間でも、守備の体勢に入っていた。
少し効いたのかもしれないが、コノエは体をふらつかせて、
「凄いわ太志!」
「上手に防いでおいてそれを言うなよ」
「は~あ。なんか勝てる気しなくなっちゃった。この勝負、私の負けよ」
あっさりと負けを認めたコノエ。さっきの威勢が嘘みたいだった。
「太志って左利きなの?みぞおちを殴ってきたとき、左手だったよね?」
「あ、ああ。小さい頃からずっと左でやってきたからそっちの方がしっくりきてな。爺さんは直せって言ってたけどなー」
爺さんは、なぜか左利きの俺を認めてはくれなかった。
「でも構えの時に右手を出してたのはどうして?」
「構えの右手は、精神を集中させて、空気の動きを読むんだ。そして、コノエの動きを予測してから拳をくりだすってところだ」
「え?右手で空気の動きを測るの?聞いたことないわそんなの」
それもそのはず、この動きを使っているのは『神崎流』だけだからな。俺も最初聞いたときは人間業じゃないとしか思えなかったからな。
「ところで、弐式って言ってたけど一体なにが違うの?」
「結構質問攻めだな。俺は弐式を使うから違いは知らんが、爺さんが先代の武術を改良したら、超えるほどのものだったらしい」
神崎流派は、他と違い動きが大きいのであまり出来る物はいない。それを爺さんが改良して、最小限の動きで出来るようにした。ま、弐式も相当動くけどな。
「でもそんな身体でよく動くわね」
「人は見た目で判断しない方が身のためだぜ」
「ご忠告どうもありがと」
そう言って、コノエはナイフを取り出した。
「ハイこれ」
きちんと手入れしているのか、差し出してきたときに太陽の光を反射して少し眩しかった。
「俺はナイフは使わない。出来るだけ相手に傷を負わせたくない」
「緊急の時ようにあなたはこれ位持ってなさい。明日、ナイフの基本的な扱い教えるから」
そう言って、コノエは先に家に戻った。
「ナイフ・・か」
コノエから受け取ったナイフの刃の部分をなぞった。
「痛っ!」
気付いたらナイフで手を切っていた。
「頑張りますか」
切った指を口に入れ、患部を舐めてから
「俺は、血が嫌いだ」
そう言って、太志もコノエの入った数分後に家に戻った。
残り一日
それは、太志の心を傷つけていた
――――同時刻のどこか
その人物は走っていた。まるで追われている――否襲われていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
そして、一つの建物からキラリと光った。
「どうしてなの!」
その人物は逃げていた。が、その瞬間に胴体を矢が穿つ。
「っぐ!」
その人物は倒れ込んだ。
「まだ・・1日・・」
そう、まだこの戦いは始まっていない。
「残ってる・・のに・・」
その人物は地球人の女性である。
「なん・・で・・なの」
その人物を影が覆う。
「別にー。油断し過ぎだよー」
ここにいる人物こそ、その人物を穿った犯人の仲間であろう。
「ま、もうお前は無理だ。とっとと死んで」
一気に冷めた声が恐怖心を心の底から湧きたててくる。
「い、いや。やめて。来ないで!」
その人物は袋の鼠状態。もはやその人物がその場の逆転を希望する事はない。
「じゃーねー♪」
ニコっと笑うと、その人物の視界は黒くなると同時に、その人物の生命も途絶えた。
「フー。これで明後日からの戦いも少しは楽になるなー」
そうこうしていると、弓を持った者が現れた。
「うまく・・いった?」
「ああ、お前のおかげさ」
「私の・・おかげ・・」
そう微笑して、その場を去った。
この二人が後に厄介な事になる事は、まだ誰も知らない。
また遅くなるかもしれませんが
気長にお待ちください