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-月影-[想い]

 






-月影-[想い]






 

 


 ほんの少し前まで誰かに恋をするなどという感情は、俺の人生には必要の無い物だと思っていた。

 

 

 自分で言うのも何だが、貧困とは無縁な家に生まれ美しいと羨望の目で見られる容姿を持っていた為、女に困った事はないし心底欲した事もない。

 

 

 女など、この身に溜まった欲を吐き出す箱だとしか思っていなかった以前の俺は、今の俺を阿呆だと笑うのだろうか?

 


「華月は居るか?」

 


 馴染みの遊郭の暖簾をくぐり開口一番、愛しい女の名を呼んだ。

 


「これは月影様、いらっしゃいませ。申し訳ありません、ただ今花魁は……」

 


「そうか、なら待つとしよう。空いたら呼んでくれ」

 


「月影様、たまには趣向を変えて違う遊女はいかがですかな?あそこにいる桔梗なんかはとても具合がいいと評判……」

 


「いや、遠慮するよ」

 


「ですが当分花魁は空きませぬよ。それなら待つ間楽しまれても……」

 


「要らぬ、と言っておるのが分からぬのか……」

 


「こ、これは大変失礼致しました。どうか御勘弁を……」

 


 主人の言葉など別にどうでもよかった。

 真の怒りの矛先は、華月と共にある男だ。


 

 


 たった今この寝屋で愛する女が他の男に抱かれているという確かな現実が、こんなにも俺を憤怒させるのだ。

 


〈この様に嫉妬に狂った姿を見たら、お前は何と言うのだろうな……〉

 


 視線を落とし月影はふふと苦笑した。

 


「月影様、準備が整いましたので……ささ、二階へお上がり下さいませ」


 

 逸る気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと階段を昇っていく。

 


 先程の怒りなどどこへやら。

 


 襖を開いた先にある、はかなくも美しいお前の笑顔だけが今宵も俺を満たしてくれるのであろう。


 


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