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諸葛亮と呼ばないで〜陰キャ高校生ダイエット部の軍師になり無双  作者: 座山食空
第二章 勝ち得たもの、失われていくもの
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第一話 二学期 凱旋

二学期初日。


まだ少し夏の匂いが残る朝。


僕――山田阿斗は、

校門前で立ち尽くしていた。


「……」


でかでかと横断幕。


『祝!!

全国高校ダイエット甲子園優勝!!

織冠高校ダイエット部(三国志研究会)』


「三国志研究会!?」


僕は思わず叫んだ。


周囲の登校生徒が振り向く。


恥ずかしい。


めちゃくちゃ恥ずかしい。


「うおおお!!」


「全国優勝だ!」


「孔明いる!」


「諸葛亮だ!」


「だからその呼び方やめて!!」


朝から最悪だった。



その時。


「おはよう孔明!」


劉備部長が現れた。


元気だった。


夏休み明けなのに元気すぎる。


「おはようございます……」


「見たか横断幕!」


「見ましたよ!」


「学校側が作ってくれた!」


「なんで三国志研究会なんですか!」


すると。


劉備部長は真顔になった。


「……実はな」


嫌な予感。


「我々の正式名称」


やめろ。


「モルック部でも」


うん。


「ダイエット部でもなかった」


「え?」


静寂。


風。


セミ。


劉備部長は小さく言った。


「正式には」


ゴクリ。


「三国志研究会だった」


「ええええええええ!?」


衝撃だった。


「なんで!?」


「部活申請通す時、“ダイエット部”だと却下された」


「まあわかる」


「だから昔の先輩が適当に“三国志研究会”で通した」


「適当すぎる!!」


周瑜先輩が後ろから来た。


「ちなみに活動内容欄」


嫌な予感。


「『三国志を通じて心身を鍛える』」


「無理あるだろ」


だが。


思い返すと。


妙に納得感もあった。



その時だった。


「石嶺先輩きた!!」


女子の黄色い歓声。男子の低いどよめき。


ざわっ。


振り向く。


石嶺先輩だった。


そして。


人だかりだった。


「……え?」


完全に芸能人だった。


「イミダゾールジペプチドの子だ!」


「ABEMAの!」


「低糖質蒸しパンの!」


「かわいい〜!」


スマホ向けられてる。


写真撮られてる。


石嶺先輩、

完全に困っていた。


「えぇぇぇ……」


その瞬間。


さらに恐ろしいものが見えた。


部室前。


長蛇の列。


「……なんだあれ」


周瑜先輩が呟く。


『ダイエット部(三国志研究会)入部希望受付』


人。


人。


人。


めちゃくちゃいる。


「嘘だろ……」


関羽先輩が震えていた。


その時。


女子たちの声。


「石嶺先輩いますか!?」


「料理教わりたいです!」


「あと関羽先輩も!」


「えっ俺!?」


関羽先輩、

完全に固まる。


さらに。


「ABEMA見ました!」


「モルックかっこよかったです!」


「泣いてるの感動しました!」


「……」


関羽先輩はゆっくり空を見上げた。


「……モテ期?」


「多分そうですね」


本人が一番信じられていなかった。



放課後。


旧校舎第三準備室。


完全に戦場だった。


「失礼します!」


「入部希望です!」


「モルック興味あります!」


「石嶺先輩いますか!?」


「関羽先輩って彼女いますか!?」


「えっ」


関羽先輩が赤くなる。


「いやその俺は別に……」


「動揺しすぎだろ」


僕は頭を抱えていた。


人、多すぎる。


狭い。


暑い。


カオス。


劉備部長も困惑していた。


「おかしい……」


「はい」


「こんな青春っぽくなる予定では……」


「元々青春でしたよ」


その時。


部室後方。


誰かがそっとドアを開けた。


五虎将軍Tシャツ。


コンビニ袋。


趙雲だった。


「……」


久しぶりに勇気を出して来た。


だが。


部室内は人で埋まっていた。


石嶺先輩は女子に囲まれ。


関羽先輩はモテていた。


孔明は書類整理していた。


誰もこちらを見ていない。


「……」


趙雲は静かにドアを閉めた。


そして帰った。


誰にも気づかれなかった。

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対比の描写が残酷でせつない
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