第二十八話 趙雲子龍の憂鬱
「……よし」
趙雲子龍は、
観客席最上段で静かに頷いた。
『荊州』と達筆でプリントされたTシャツも着てきた。
今日はモルック地区交流大会。
織冠高校ダイエット・モルック戦略研究部も出場する。
つまり。
応援するチャンスだった。
「今日はちゃんと顔出そう」
そう思っていた。
本当は。
でも。
受付前で、
聖マリア学園の女子たちと談笑する部員たちを見てしまった。
なんか。
キラキラしてた。
眩しかった。
「……」
結果。
観客席最上段にいた。
人類は緊張すると高所へ逃げる。
*
試合開始。
「うおおお関羽ぁぁ!!」
かなり痩せてボーイッシュなアニメキャラみたいになった劉備部長の声が響く。
「ナイスです!」
もはや芸能人の石嶺先輩が拍手。
孔明こと山田が、
真面目な顔で作戦を考えている。
……なんか。
ちゃんと部活だ。
趙雲は少し笑った。
「すげぇな」
少し前まで、
変な奴らの集まりだったのに。
今は。
なんか青春している。
その時。
カコン!!
「決まったぁぁぁ!!」
会場大歓声。
趙雲も思わず立ち上がった。
「よっしゃぁ!!」
周囲が振り向く。
恥ずかしい。
座る。
だが。
なんか。
楽しかった。
*
試合後。
趙雲は勇気を出した。
「……よし」
差し入れのスポドリを持つ。
今なら行ける。
今なら自然。
今なら。
だが。
「みんなー!集合写真撮るよー!」
聖マリア学園だった。
「うおー!」
「関羽先輩こっち!」
「石嶺先輩かわいい!」
「孔明笑ってー!」
完全に輪ができる。
キラキラしてる。
入れない。
「……」
趙雲は静かに踵を返した。
そのまま自販機の裏へ移動。
スポドリを一本飲む。
ぬるかった。
*
帰り道。
夕焼け。
踏切。
セミ。
コンビニ袋。
趙雲は小さく笑った。
「……何やってんだろ、俺」
でも。
スマホには、
試合中に撮った写真が残っていた。
笑うみんな。
夕陽。
モルック。
青春。
趙雲はその写真を、
なんとなく消せなかった。




