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第二十八話 趙雲子龍の憂鬱

「……よし」


趙雲子龍は、

観客席最上段で静かに頷いた。


『荊州』と達筆でプリントされたTシャツも着てきた。


今日はモルック地区交流大会。


織冠高校ダイエット・モルック戦略研究部も出場する。


つまり。


応援するチャンスだった。


「今日はちゃんと顔出そう」


そう思っていた。


本当は。


でも。


受付前で、

聖マリア学園の女子たちと談笑する部員たちを見てしまった。


なんか。


キラキラしてた。


眩しかった。


「……」


結果。


観客席最上段にいた。


人類は緊張すると高所へ逃げる。



試合開始。


「うおおお関羽ぁぁ!!」


かなり痩せてボーイッシュなアニメキャラみたいになった劉備部長の声が響く。


「ナイスです!」


もはや芸能人の石嶺先輩が拍手。


孔明こと山田が、

真面目な顔で作戦を考えている。


……なんか。


ちゃんと部活だ。


趙雲は少し笑った。


「すげぇな」


少し前まで、

変な奴らの集まりだったのに。


今は。


なんか青春している。


その時。


カコン!!


「決まったぁぁぁ!!」


会場大歓声。


趙雲も思わず立ち上がった。


「よっしゃぁ!!」


周囲が振り向く。


恥ずかしい。


座る。


だが。


なんか。


楽しかった。



試合後。


趙雲は勇気を出した。


「……よし」


差し入れのスポドリを持つ。


今なら行ける。


今なら自然。


今なら。


だが。


「みんなー!集合写真撮るよー!」


聖マリア学園だった。


「うおー!」


「関羽先輩こっち!」


「石嶺先輩かわいい!」


「孔明笑ってー!」


完全に輪ができる。


キラキラしてる。


入れない。


「……」


趙雲は静かに踵を返した。


そのまま自販機の裏へ移動。


スポドリを一本飲む。


ぬるかった。



帰り道。


夕焼け。


踏切。


セミ。


コンビニ袋。


趙雲は小さく笑った。


「……何やってんだろ、俺」


でも。


スマホには、

試合中に撮った写真が残っていた。


笑うみんな。


夕陽。


モルック。


青春。


趙雲はその写真を、

なんとなく消せなかった。

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