第二十六話 優勝インタビュー 諸葛亮と呼ばないで
「優勝ぉぉぉぉ!!!」
紙吹雪。
歓声。
照明。
ABEMAコメント欄大爆発。
『織冠高校おめでとう!』
『モルック部優勝してて草』
『関羽泣きすぎ』
『石嶺先輩かわいい』
『孔明きたぁぁ』
「だから孔明じゃないって……」
僕は呟いた。
だが。
逃げ場はなかった。
*
表彰台。
金色のトロフィー。
『全国高校ダイエット甲子園優勝』
意味不明な大会だった。
でも。
僕たちは本当に優勝した。
「それでは優勝校インタビューです!!」
高島政伸が叫ぶ。
スポットライト。
カメラ。
全国配信。
うわぁ。
「まずは部長さん!」
マイクが向く。
劉備部長。
少し汗ばんだ顔。
でも。
笑っていた。
「はい!」
「優勝おめでとうございます!!」
「ありがとうございます!」
拍手。
コメント欄。
『部長かわいい』
『元気系すき』
『天下統一きた』
その時。
高島政伸が聞く。
「ここまで、本当に色々あったと思います!」
「はい!」
「今どんな気持ちですか!?」
静寂。
劉備部長は、劉備小桃は少しだけ空を見た。
そして。
言った。
「今年の初め――」
会場が静まる。
「我々はダメダメな部活でした」
「……」
「運動も続かない」
「ダイエットも続かない」
「なんなら部活ですらなかった」
「それはそう」
周瑜先輩が小声で言った。
会場が少し笑う。
劉備部長は続けた。
「でも」
こちらを見る。
「彼の加入で、我々は変わりました」
ドクン。
「ただダイエットを口実に、変わったやつらが集まるダメな部活から――」
なんか悪口入ってるな。
「本気でダイエットするモルック部に!」
「結局モルック部!?」
会場爆笑。
コメント欄。
『認めたw』
『モルック部じゃん』
『長かった伏線回収』
その時。
劉備部長が僕の肩を掴んだ。
嫌な予感。
「紹介します!!」
やめろ。
「史上最高の軍師――」
やめろぉぉ。
「諸葛亮孔明です!!!」
「諸葛亮って呼ばないでぇぇぇ!!!」
会場爆発。
笑い。
拍手。
コメント欄。
『本人否定w』
『山田www』
『孔明かわいい』
『軍師泣いてる?』
泣いてない。
ちょっとだけだ。
僕はマイクを握る。
スポットライト。
観客。
全国配信。
人生で一番意味不明な状況だった。
「えっと……」
喉が渇く。
でも。
不思議と怖くなかった。
「山田です」
笑い。
「なんか気づいたらこうなってました」
また笑い。
僕は少し息を吸った。
そして。
言った。
「最初は、本当に退屈だったんです」
静かになる会場。
「学校も」
「毎日も」
「未来も」
「全部」
風。
照明。
紙吹雪。
「でも」
僕はみんなを見る。
劉備部長。
周瑜先輩。
関羽先輩。
石嶺先輩。
曹操会長。
そして。
ここまで来た全部。
「変な部活入ったら」
少し笑う。
「人生、ちょっと面白くなりました」
静寂。
一秒。
二秒。
そして。
大拍手。
歓声。
コメント欄。
『青春だなぁ』
『泣いた』
『普通にいい話』
『関羽また泣いてる』
「だからなんで関羽先輩そんな人気なんですか」
その時。
高島政伸が叫ぶ。
「素晴らしいぃぃぃ!!!」
拍手。
「これぞ青春!!!」
「青春……」
僕は少しだけ呟いた。
その言葉。
少し前の僕には、
一番遠いものだと思っていた。
でも今は。
たぶん。
ちゃんとここにあった。
その時。
劉備部長が小声で言う。
「なぁ孔明」
「だからその呼び方」
「終わったらラーメン行こうぜ」
「……いいですね」
「替え玉する?」
「それはダメです」
「ダイエット部だからな!」
「今さら!?」
会場がまた笑った。
そして。
博多の夏は、
まだ終わりそうになかった。




