異世界不動産
気づいた時には先の見えない長蛇の列に景都は並んでいた。
2025年 世間では転生もののアニメや漫画、小説が大流行。
日本では、現実世界に馴染めず異世界転生に憧れた人々の自殺が社会問題になっていた。
バカバカしい話だが僕もその一人である。
15歳で旅立った僕を両親はどう思うだろうか。遺言などは残さなかった。理由が理由だけに‥
前の人生に不満があったわけではない。ただ目的のない日々に嫌気がさしていた。
勉強、進学、部活、受験、就職、なに一つ魂が震えるようなことがなかった。
自分がやりたいと願う事はあの世界では叶わないと思った。
魔法、スキル、剣、勇者、魔王。異世界にはこんなにも心震えるものが溢れているのに‥
そんなことを考えているうちに列は二手に分かれていた。
立て看板には[輪廻転生は右、異世界転生は左]と書かれていた。
左に進んでいくと道の先に、お城?教会?のような大きな建物があった。
「異世界不動産へようこそ」アニメに出てくるような天使のような女の子に案内されたい夢は、すぐに打ち砕かれた。
中年のサラリーマンみたいなダボダボのスーツを着た見るからに不健康そうな男が僕の受付担当だった。
「どのような異世界をお望みですか?」
「ファ‥ファンタジー要素多めの世界で」
自分の言葉に顔が赤くなった。いざ口に出すと恥ずかしいもんだな‥
「はぁ、、あなたもですか。」
「あなたもと言いますと?」
「最近異世界転生の希望者が激増していてそのほとんどがファンタジー希望なんです」
「僕みたいな人達のせいですね‥」
受付の職員の呆れた顔は忘れられそうにない‥
「人気な世界は今や転生者だらけでもはやあなたが前にいた世界とさほど変わらないかと」
確かに、せっかく転生したのに勇者やチートスキルをもった奴らがたくさんいる世界なんて何の面白みも感じない
「あの〜できれば転生者の少ないとこがいいんですけど…」
「と言われましてもねぇー」
その時受付の奥から別の職員が書類を持ってきた
「景都さん!!あなた運がいいです!!」
巨体が身を乗り出して書類を渡してきた
そこには【急募 ファンタジー希望の冒険者】と書いてあった
受付が言うには平和な世界のはずが突如魔王が出現したようだ
「定員は5名になりますがいかがなさいますか?」
迷う余地は無かった
「よろしくお願いします」
「かしこまりました!急募のため面倒な説明は省かせていただきます」
そういって奥の召喚の間と書かれた部屋に案内された
「それでは景都様、素敵な異世界ライフをお楽しみください、尚転生され次第ステータスのご確認をお願いいたします、私のとっておきのスキルもご用意してありますのでぜひご活用ください」
スキル!!これを僕は待ってたんだ!!
異世界への期待と高揚感は今までに味わったことの無いほど景都の魂を震わせていた
「それではお気をつけていってらっしゃいませ」
ここから始まるんだ、僕の異世界ライフ
受付の不的な笑みを横目に見ながら景都は光の先へ進んでいった