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第一話:え、ここどこ?オレの最強カプモンデッキは!?

「いっけー! オレの最強モンスター、ボルケーノ・ドラゴン!」


 アキラは、消しゴムのカスを指ではじきながら、得意げに叫んだ。昼休み、教室のすみっこは、アキラとタカシのカプモンカードバトルで熱気ムンムンだ。


「うわっ、またアキラのドラゴンかよー! しかもレアカードじゃん、ずるい!」


 大柄なタカシが、本気で悔しそうな顔をする。タカシは力が自慢だけど、カプモンカードではアキラに負けっぱなしだ。アキラは身長こそタカシより低い135センチだけど、カプモンカードの腕前は学年トップクラス、いや、町内最強だと自負している。四人兄弟の長男で、ちょっとイタズラ好きだけど、そこはご愛嬌だ。


「ふっふっふ。戦略ってもんを教えてやるぜ、タカシ。カードゲームは頭脳戦なんだよ、頭脳!」

 アキラが勝利のポーズを決めようとした、その時だった。


「二人とも、またそんなことして! 宿題終わったの?」


 メガネをキラリと光らせて現れたのは、クラス委員長のヒトミだ。ヒトミはクラスで一番背が高くて(なんと150センチ!)、頭もキレッキレ。でも、ちょっとカタブツなのが玉にキズ。アキラとは幼馴染だけど、最近ちょっとギクシャクしてるような、してないような…?


「げっ、委員長!」

「ヒトミには関係ないだろー!」


 アキラとタカシが同時に叫んだ。まさにその瞬間、教室がまばゆい光に包まれた!


「うわっ! なんだこの光! 目が、目がぁ~!」

 タカシが目を押さえて叫ぶ。

「ちょ、何これ!? 最新のドッキリ番組!?」

 アキラも訳が分からない。ヒトミはというと、メガネの位置を直しながら冷静に状況を分析しようとしている…ように見えたけど、さすがに口がアングリ開いていた。


 光がおさまると、そこは…教室じゃなかった。

 石でできた、だだっ広い部屋。天井は高くて、シャンデリアみたいなのがキラキラしてる。目の前には、ふかふかの絨毯が敷かれていて、その先にはいかにも偉そうなおじさん(たぶん王様だ!)が、これまた偉そうにヒゲをたくわえたおじいさんと、ツンとすました金髪の若い男(王子様っぽい!)と一緒に座っていた。


「え、え、えええええーーー!?」

 アキラ、タカシ、そして5年2組のクラスメイト20人全員、同じ場所にいるみたいだ。みんな、何が起きたか分からず、キョロキョロしている。


「静まれ、異世界からの勇者たちよ!」

 王様っぽいおじさんが、よく通る声で言った。

「え、勇者? オレたちが? ドッキリじゃなくて?」

 アキラが思わずツッコミを入れると、隣にいたタカシが小声で言った。

「なあアキラ、もしかしてオレたち、ゲームの世界にでも入っちゃったんじゃね? すげえ!」

 タカシの目はキラキラ輝いている。こいつ、状況わかってんのか?


「いかにも。お前たちは、我が国を救うために召喚されたのだ」

 金髪の王子様が、ちょっと見下したような目で言った。なんかムカつく言い方だ。


 それから、ヒゲのおじいさんが水晶玉みたいなのを取り出して、一人ずつ「ステータス」とやらを調べることになった。

「え、ステータスって、カプモンカードの攻撃力とか守備力みたいなやつ?」

 アキラの胸は期待でドキドキした。オレならきっと、「最強カードゲーマー」とか、そんな感じのすごいステータスのはずだ!


 クラスメイトが次々に鑑定されていく。

「鈴木タカシ…ほう、『兵士長』か。なかなか良いな」

 タカシは「へへん」と胸を張った。たしかに、タカシはクラスで一番体が大きいし、ケンカも強いからピッタリかも。


「斉藤ヒトミ…おお! これは素晴らしい!『賢者』の素質じゃ!」

 ヒトミが賢者!? あのガリ勉委員長が? でも、たしかに頭はいいもんな。ヒトミはちょっと戸惑った顔をしながらも、メガネをクイッと押し上げた。


 そして、ついにアキラの番が来た。

「よし来た! オレの番だな! どんなすごいステータスか、楽しみにしてろよ!」

 アキラは自信満々で水晶玉の前に立った。ヒゲのおじいさんが、じーっと水晶玉をのぞき込む。


 …シーン。


 あれ? おかしいな。普通、ここで「おお、これは伝説の!」とか言う展開じゃないのか?


 おじいさんが、うーんと首をひねって、もう一度水晶玉を見た。隣の王様も王子様も、いぶかしげな顔をしている。


「あのー、どうなんスか? オレのステータス」

 アキラが待ちきれずに聞くと、おじいさんは困ったような顔で、こう言った。


「うーむ…何度見ても…『ステータスなし』、じゃのう」


「……………は?」


 アキラは、自分が何を言われたのか、一瞬理解できなかった。

 ステータス…なし? 最強カードゲーマーのアキラ様が? ナンデ!?


「なし、だと? おいジジイ、本当にこのチビたちが役に立つのか? 特にそこの一番小さいのは、ただの役立たずではないか!」

 金髪の王子が、アキラを指さして鼻で笑った。


 カチン!とアキラの頭の中で何かがキレた。

 チビで役立たずだと!? このオレに向かって!


「な、なんだとー! ステータスなんかなくたって、オレはカプモンカードで鍛えた戦略があるんだ! お前みたいな金ピカ頭より、よっぽど頭いい自信あるぜ!」

 アキラが言い返すと、王子は眉をピクリと動かした。


「ほほう?面白いことを言う。では、その『戦略』とやらを、戦場で見せてもらおうか。まあ、期待はしておらんがな」


 せんじょう…? 戦場!?

 アキラはゴクリと唾をのんだ。どうやら、本当にただ事じゃない世界に来ちゃったみたいだ。

 ステータスなしのアキラ。兵士長のタカシ。賢者のヒトミ。そして、生意気な王子。

 いったいこれから、どうなっちゃうんだー!?


(つづく)

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