表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハハフタリ  作者: 夏水
1/1

〜わたしには2人のお母さんがいます〜

母親が2人いると言ったらなんと思われるだろう?


(ひまり)こと、早坂ひまりは活発がとりえの小学4年生。学校の帰りにぼんやりとそんな事を考えて歩いていた。


産みの親と育ての親とか…ドラマや漫画、ゲームの世界ならそんな感じだろうか?


もちろん、ひまりを産んだ母親は1人。(麻里ママ)こと早坂麻里だった。もう1人、ひまりが母親と慕っているのは(カナママ)こと片倉カナだった。ただ、昔からある絵本や漫画のなかで(母親の理想)のように描かれているイメージをもっているのは、カナママだった。(優しくて料理上手の綺麗な…)実際、早坂家の台所仕事を担っているのはカナママで、ひまりは数えるくらいしか麻里ママの作った料理は食べた事がなかった。もちろん、色々な(お母さん)がいる事も友だち等からひまりは知っていたが…


逆に麻里ママはサバっとした性格で、家事などは苦手で外でバリバリ働く、早坂家の大黒柱的存在だった。まぁ大黒柱とか、ひまりにはピンとこない表現だが、誰かがそう言っていた。


そう、ひまりは2人の母親(的存在)と3人で暮らしていたのだ。父親はひまりが憶えていない赤子の頃に亡くなっていた。名前は早坂一はじめ。ひまりは幼い頃から母親2人から、この父親にそっくりだと言われていた。そして身内ではない身近の人たちには、カナママは、はじめパパの姉だと言っていたが、本当は違うことをひまりは知っていた。


なぜなんだろう?カナママは、はじめパパの事を昔から知っていた感じがする。本当に姉と弟のようで、実際ずっと疑問にすら感じてなかったのだが…(麻里ママ)(カナママ)と呼んでいるのを今より幼い時に、友だちに不思議に思われて、『そう呼んでるだけなのよ~、カナさんは叔母さんにあたるの』と麻里ママがやや困り顔で言っていたのが、記憶に残っていた。それからは人前ではママ呼びはしないようにしていた。


なんだか聞きづらくてちゃんと聞けてないなぁ…ぼんやりと考えながら、ひまりはやっと家の鍵を開けた。


『ただいま〜』玄関を開けると甘い焼き菓子の匂いがした。ひまりはその匂いにつられて、手も洗わずに台所へかけこんだ。台所にはカナママがお茶の支度をしていた。


『ひまりちゃん、お帰りなさい。ランドセル置いて手を洗ってらっしゃいね。』といつもの優しい微笑みを浮かべていた。ひまりは言われた通り、部屋にランドセルを置いてジャケットを脱ぎ、代わりに部屋着のカーディガンを羽織って台所へ向かった。そのカーディガンもカナママの手作りの手編みの物だった。


『今日のおやつはマドレーヌ?いい匂いだね〜、いただきま〜す』と、ひまりは注がれたばかりの紅茶とマドレーヌを交互に頬張りながら、今日の学校であったちょっとした事の話を思いつくまま話した。それがひまりのいつもの日課だった。カナママは時々口を挟みつつ、にこやかに聞いていた。


『そうだ、ひまりちゃん、麻里ちゃんは残業になるって連絡あったから』『何時に…なるの?』モグモグしながらひまりは質問する。

紅茶の2杯目を注ぎながら、『そうねぇ…ひまりちゃんが寝る前くらいには、遅くても帰るんじゃないかしら。夕食は先に食べてていいって言ってたから』とカナママは答える。『大変だね〜』と何気ない会話の後、いつものように宿題を教えてもらいつつ、済ませて自分の部屋へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ