魔竜との戦い その5
「うう……」
土の味がする。髪が焼けて焦げ臭い。手足を踏ん張り体を起こす。早く立ち上がらなくては。
蒼の剣を杖に起き上がる。まわりの景色が変わっていた。
ここには木々が沢山あったはずだが、それがなくなっていた。あたりには焼け焦げた匂いがたちこめている。
光に包まれるあの瞬間。とっさに魔法で氷の棺をつくり、その中に飛び込んだ。しかし、そこで記憶がない。それでも生き残っているのは少しはダメージを軽減できたのかもしれない。
それよりも、この場から動かなければ。ここに身を隠すものは何もない。
「焼け残ったか」
私の姿をした冥王竜が見下ろしている。私ってこんなに冷たい目をしているのだろうか。
ドガァ
何をされたかわからない。
十メートルくらい吹き飛ばされた。
腹部に激痛を感じる。呼吸ができない。
「がっ……がはっ……がふぁ」
おそらくお腹を蹴られた。私の姿してるくせに威力は人間の蹴りじゃない。
せめて……一太刀。
「蒼の……剣」
ありったけの気力を振り絞り魔力を込める。
ガキーン
片手で虫を払う様に弾き飛ばされた。
もうどうしようもない……
「終いだな」
ガスッ
「あうっ」
頭を踏み付けられた。
「さっさと割れてしまえ」
一気に圧力が加わる。
「きゃあああああああああ‼︎」
もう……だめだ。
私が死んだら英雄の力は正しい人のところに行くのかな。
そうだったらいいけど……
ドゴッ
私に乗っかっていた足が、凄い勢いで真横に吹き飛んでいった。
頭にかかっていた力がゼロになるが、痛みで意識がはっきりしない。
「南の魔女とか魔王とか言われているのに大したことないんだな」