魔竜との戦い その4
「あなたは誰なの⁉︎どうして……どうしてここに!」
「んっ?余が誰か気付いていないのか。こんなちっぽけな姿だからか。余は冥王竜レイアーク。魔界で頂点に立つドラゴン族だ。こんな小さな体でも余の威光と強さは変わらん。むしろ、このコンパクトな体の方が動きやすいな。それよりも、不意打ちとはいえ、あのベルハザードを倒したのは称賛してやろう。今後も余に仕えることを許そう」
魔界で頂点って……黒い魔竜なんて格下じゃない。
「仕えるというと私は何をすれば……何をやらせるつもり」
「何をとは意味がわからん。余の命令通り動けばいいのだ」
「だから……何をやらせるのって聞いているの!」
「そうよのう。せっかくこの世界に来たのだ。まずはこの世界にいる邪魔な息をする者を全てを殺してくるがいい。ここは余が住むのに丁度いいかもしれぬからな」
何でこういう奴って極端な事ばっか言うのかしら。魔界で頂点にいるなら、それで満足してほしいものだ。
「……魔界について行って部下として仕えるって言うなら従ってもいいと思ったけど。それじゃあダメかしら?」
「何故お前ごときの意見をきかねばならんのだ」
私一人が犠牲になるくらいならいいかと思ったけど無理そうね。
「まぁ、そうくるわよね。交渉は無理か……じゃあダメ元で戦うしかないじゃない。まったく」
「ほぅ。余と戦うと?ふははは!この力の差をどう埋めるつもりだ。そら。武器くらいは返してやろう」
捕まっていた蒼の剣が解放された。
「力の差?あぁそう。もしかしたらこの形勢を逆転できる奇跡とか起きるかもしれないわよ」
これが、今の私にできる精一杯の強がりだ。
せめて閃光さんと盾さんがいれば、いろいろやりようはあったかもしれないけど、ないものねだりしても何も状況は変わらない。
まわりを見回す。今いる場所は月明かりが届くが森の中は暗闇だ。これを利用するしかない。
「炎の壁三枚重ね‼︎」
高さ十五メートルの炎の壁を三枚出現させる。
こんなものが通用するとは思わないが、今回は炎の壁を目隠しに使うので問題ない。
「ほぅ。一瞬で三つ発動させるとは。なかなかやるではないか」
人間でこれが出来るのは私だけだ。魔の力が備わってから魔法が使える様になった。しかも詠唱ゼロどころか一瞬で発動できる。
今のうちに森の中へ身を隠す。これでアイツも私の事を見失ったはずだ。
この隙にベルハザードを倒した剣を生成する。攻撃力だけでいえばアレが最強だ。尋常じゃない集中力がいるので、変化球なしの突撃しかできないが、隙を見て斬り込むしかない。
幸いな事にあいつは私の事を、だいぶ甘く見ている。その隙につけ込めば当てる事ができるはず。
カァァァ
森の中が光に照らされて明るくなっていく。
いや、違う。光が木をなぎ倒しながら、こちらに迫ってくる。
「嘘……そんな……」
次の瞬間、その巨大な光は、私ごとすべてを呑み込んでいった。