地獄のガールズトーク
「だから、そんなんじゃないから。お付き合いとかしてないし。ただの同僚だよ」
就寝前だというのに黄色の勇者のテンションが高い。
「でも毎日手料理振る舞ってたんですよね。いいなぁ。わたしも『いい人』がいれば料理で勝負できると思うんですよね」
コンコン
「フレデリカ様。今よろしいですか」
扉がノックされ、叡智の聖騎士の声が聞こえる。
「どうぞ」
扉を開け、だぶだぶ寝巻き姿の叡智さんが入ってくる。
「剣の聖騎士が先ほど戻りましたが報告はどうしましょう?明日にしますか?」
「そうね。閃光さんも疲れているだろうし休んでもらって。緊急でないなら明日で大丈夫って伝えて」
「かしこまりました。では失礼します。ニーサ様も楽しそうですね。フレデリカ様のお慕いしている男性の話で盛り上がっているみたいですね。部屋の外まで楽しそうな声が聴こてきました。一緒に入浴したり、裸で抱き合ったり的なお話でしょうか」
ピシッ
空間にヒビが入った気がした。
「フ……フレデリカさん。フレデリカさんは、お付き合いしていない男性と……そんな事していたのですか……不潔です」
「ちが、違うのよ!ニーサちゃん!話を聞いて。え?なんで私から距離をとるの?話を聞いて!ちょっと叡智さん、後で重要な話が……じゃなくて、とりあえず今ここですぐに誤解をといて!」
「わかりました……フレデリカさんの事信じます」
「……ありがとう」
一時間後……
なんとか誤解は解けたが、何か大切なものを失った感が拭えない。
「でも話聞いていて思ったのですけど、フレデリカさんの好きな人と、わたしの剣の師匠って特徴似てますよね。なんか親近感わいてきちゃいます。ちょっとだけ会ってみたいかも」
「あの……フレデリカ様」
「ダメ叡智さん!余計なことは言わないの。ね!」
効果があるかはわからないけど、語尾の『ね』に力一杯魔力を込める。
「あれ?あたし何かまずい事しちゃいました?」
「あなた、ほんとうに悪意もなく発言したのね。そんな事言われたら責められないじゃない……あと、たった今、言おうとした事も言ってはダメだからね。絶対」
「フレデリカ様が勇者の師匠の事……」
「だからダメー!聖騎士の中であなたが一番まともだと思っていたのに」
「あたしは一番普通ですよ。自信あります」
そんな自信満々に胸はらないで……