リミッター
「フレデリカさん全然本気出していないですよねぇ」
えっ?何その視線……まるで裏切り者を見る目じゃない。
「何かしら。そのジト目的な視線。ちょっとチクチク痛いのだけど……」
「それは心に疾しい事があるからですよ。そっかぁ。わたし手を抜かれるほどの力しかないのか。もっと頑張らないと」
「でも、さっきはアレでしょ?剣撃を受けるって話だったし。そういう意味だと全力でガードしたよ」
「まぁ、いいですけど。あと確信はないですけど、前より強くなっていません?なんとなくですが。何かしたんですか?あるなら参考にしたいです」
「何かしたかと言われると……したのかな?あのさぁ、昔話の英雄の話ってあるじゃない?あの悪魔を倒して世界を救いました。的な」
「子どもの頃に聞かされるやつですよね。世界を救った使者は力を半分にされて人間になったみたいな」
「そうそう。その『半分』ってところが気になって、痕跡がないか自分自身を調べてみたの。そうしたらさ。半分にされたわけじゃないのよ。力が出せないようにリミッターがかけられていただけだったの。だから魔の力使ってリミッターとっちゃったわけ」
「ち、ちょっと待ってくださいよ!今の話からするとフレデリカさんって伝説の英雄なんですか⁉︎」
「えっ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないですよ!だって説明した記憶ありませよね?始めて聞きました。あぁ……伝説の英雄に勝負挑むとか……ないよね……バカみたいですよね……わたし」
えっ?泣いてるの?ち、ちょっと!なんで崖に向かって歩いていくのよ!
「そんな事ないよ。ニーサちゃんだって勇者じゃない。これから伝説となって、後世に語り継がれるんだから。死んじゃ駄目よ。ねっ?」
高所から飛ぼうとしている少女を背後から羽交締めにする。
「だけどぉ……だけどぉ……」
全然泣き止まない少女。私も昔はこんな面倒だったのかな……
どうすれば……そうだ!
金髪の髪を優しく撫でる。私はコレに弱かった。
「よしよし。ニーサちゃんの修行手伝ってあげるから一緒にがんばろ。ねっ?今日も泊まっていいから。ご飯食べてお風呂入れば気持ちも晴れるよ」
「ほんとですか?わたし強くなれますか?」
「なれるよー。強くなって魔王倒すんでしょ?」
自分で言っていて意味がわからない。
「ありがとう!フレデリカさん大好き!」
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