魔王と勇者 その2
「盾さんって、綺麗な肌していますよね。本当に羨ましいです。しかも、すごい美人ですし。わたしも盾さんみたいな女性になりたいなぁ、って日々頑張ってるんですよ」
「そんな事ないですよ。ニーサ様も女性らしい体に成長していますし。バストのサイズも一般の女性の平均値よりも大幅に……はっ……申し訳ございませんフレデリカ様。私は決してその様には」
「なんで、そこで謝罪が入るのよ。そのお湯、魔界のマグマに変えてやろうかしら。それよりニーサちゃん。ただ遊びに来たわけじゃないんでしょ?」
そんな事は誰でもわかる。こんな危険な辺境まで、わざわざお風呂に入りにくる変人はいないだろう。いや……この子ならありえるのかしら……
「えっ?わかっちゃいます?ちょっと聞きたい事がありまして。魔竜ベルハザードって知ってます?なんか空想物語に出てきそうな名前ですが」
魔竜ベルハザード?聞いたことがない。名前に『魔』って付くという事は私の関係者かしら。竜……ドラゴン……覚えがないかな。
「知らないわよ。それって私と関係してるのかな?」
「うーん……まぁ」
金髪の勇者は何か言いづらいそうに口籠る。
「えっ?大丈夫だよ。遠慮なく言って。魔竜さんみたいな名前の人は知り合いにいないから」
本当に心当たりがないから私とは無関係だろう。
「えっと、二週間前くらいなんですけど、また神様からの使いさんが現れまして……えー要約すると、フレデリカさんが覚醒した影響で魔界との繋がりが強まってしまったそうです。それで魔竜ベルハザードっていう魔界で四番目くらいに強い竜が人間界に侵攻してくるとかで。それで、そのの侵攻を食い止めないと、この世界が良くない事になっちゃうので勇者のわたし達に討伐をお願いされちゃったんです。それで先週、ここから北にある魔界とのトビラに行ったんですけど、出てくるのは、わたしだけでも対処できる様な小物ばかりでして」
「そういえばちょっと前に、スパークとリンクとニーサちゃん。この屋敷の前通ったよね?魔力迷彩かけていたから二人は気付かなかったみたいだけど、ニーサちゃんとだけ目が合って、ウインクくれたの覚えている。なんでニーサちゃんだけに気づかれたのかは疑問だったけど」
「わたしって、自分の気配をゼロにしたり、他の気っていうのかなぁ。気配みたいなのを感知するのが得意みたいです。昔からですけど」
「ふーん。それで魔竜ベルハザードとやらは退治出来たの?」
「だから、現れなかったんですよ。それでフレデリカさんが何か知らないかなぁ、って事でお邪魔してまーす。それはそうと、私もヴァニラご馳走になってもいいですか?」
軽いわね。この子。
「いいわよ。持ってくるから待ってて」
「ありがとうございます!フレデリカさんのヴァニラを超えるものは市場ではまだ見つかりません。屋台出したら評判になりますよ、きっと。あっ!今気づきましたが、今日のフレデリカさんの服、なんかエッチですね。素敵です」
「ありがと。ゆっくりしてて」
魔竜ベルハザード……魔界の四番目。
そんなものが湧き出てくる様になる環境になってしまっているのだとしたら、やはりその責任は私にあるのかもしれない。
そうであるなら私も陰ながら協力すべきだ。
せっかくアクワが統一されて平和になったのに、争いが起きるのは、誰も望んでいないだろうし。
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