魔王誕生
鍋から吹きこぼれるお湯のように、体から魔力が吹きこぼれている。
吹きこぼれた魔力は波紋のようにまわりに広がって、この空間を支配していった。すでに、転移無効の結界は打ち消した。
「叡智さん帰りましょ。転移魔法の準備をお願い」
「は、はいフレデリカ様」
「魔女め!逃がさないと言った……」
ドゴッ!
赤の勇者の腹部に拳がめり込む。
「ぐふっ」
一瞬で落とした。痛みは感じないはず。
「南の魔女ぉ!よくも……うっ」
「リンクくんもゴメンね。体の力抜いて」
青の勇者の頸動脈を締める。
眠るように、ゆっくりと地面にくずれ落ちた。
この空間で私の動きを捉えることは誰にもできない。
シュン
「いやぁ、来ないで!もう何もしないからぁ!こっちに来ないで……あっ……あ……あ」
敵が目の前に突然現れるのだ。ビックリするのも無理はない。
「ニーサちゃん。大丈夫。怖がらないで。抵抗しなければ何もしないから」
「なんで⁉︎わたし達って勇者じゃないの?動き全然見えない。二人とも一瞬で。ごめんなさい。何もしないで。許して」
「落ち着いてニーサちゃん。二人にも伝えてほしいの。私たちは世界を滅ぼしたりしないから。だから戦うのやめよう」
そっと背中から抱きしめる。
「わたしのこと……殺さないの?」
「そんな事しないよ。あなた達だけじゃない。もう誰も殺めたりしないから。あなた達の前には二度と現れないから。さようなら。みんなで旅できたの楽しかったよ」
「そう……わたし……も」
意識を失った。
彼女をそっと地面に横たえる。
「また、あの人との約束まもれなかったなあ……さあ、そろそろ帰ろうかしら」
聖騎士の方を振り返る。
シュン
一瞬で移動する。
「叡智さんの転移ほどじゃないけど便利ねコレ」
あとからわかった事だが、自分の魔力を放出し、その魔力が支配している空間内を瞬間移動できるみたいだ。
「フレデリカ様。その力は?」
「あの悪魔がよこした力よ。これじゃあ本当に化物になっちゃったわね。詳しくは帰ってからにしましょ。私、お腹減っちゃった。蒼の剣、帰りましょ」
地面に刺さっていた蒼い剣が戻ってきた。
いつもの定位置である背中に収まる。
「叡智さん、お願い」
四人と一振りの剣は光に包まれ、北の大地を後にした。
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