フレデリカ・クラーク その4
ジリリリリ
目覚まし時計の騒騒しいベルの音が鳴っている。
うるさい……誰か止めてほしい。
まぁ、私しかいないから自分で止めるしかないのだけれど……
ベルの音を止めようと目覚まし時計のある方向へ腕を伸ばす。
ジリリ……
あれ?ベルの音が止まった。
私まだ何もしてないのだけれど。まっ、いいか。
そういえば……なんかお布団の中すごい温かい。
お布団というよりも、私の抱き枕が温かいのかもしれない。はぁ幸せ……
あれ?抱き枕って何?私そんなの持っていない……
薄暗い中、手探りで抱き枕らしき物体の感触を確かめる。
……えっ?……はうっ!これは筋肉?筋肉型抱き枕?いやいや、そんな気持ち悪いものがあってたまるか。これは、生の大胸筋だ。
恐る恐る視線を上にあげてみる。
そこにはホークの顔をした頭部がこっちを見ていた。
「フレデリカ。おはよう。身体は大丈夫か?」
「うわわわ!ホ、ホーク!あんた何で一緒に寝てるの!?それに服着てないじゃない……って私も裸!?」
その時になって、自分が衣服を一切身につけていない事に気づいた。
「あ、あなた何もしてないわよね!?」
「オレの事『あんた』って言った?オレって君の上官で、まぁまぁ偉かったつもりなんだけど……しかも、あらぬ疑いをかけられている気がするのだが」
「だ、だって、お互い裸の男女が、同じベッドで目をさましたのよ。普通疑うでしょ」
「フレデリカ……最後にある記憶は?」
「えっ?うーん……気分が悪くなって……お風呂に入って……お風呂に入った気がする」
「正解だよ。で、そのまま寝落ちしたんだよ。びしょ濡れのお前を担いで体を拭いて、ベッドまで運ぶの大変だったよ」
「体拭いてって……裸見られた……全部見られた……」
眠っている無防備な状態で全身をくまなく見られた。想像しただけで、死にたくなるくらい恥ずかしい。
「しかたないだろ。オレだって罪悪感に堪えるの大変だったんだよ。それより、今も見えているぞ」
「うわわわ!わかっているなら少しは視線そらしなさいよ!男性として、少しは乙女心ってのを分かった方がいいわよ!」
ホークの頭を両手で掴み、力いっぱい枕に沈める。
布団で生き埋めにし、その隙に衣服を身につけた。
「あのぉフレデリカさん。オレ、一応きみを介抱したんですけど……」
生き埋めの刑より生還したコノ上官は自分の扱いに納得してないようだ。
「わかっているわよ。ベッドまで運んでくれたのはありがと。昨日の件はもういいわよ。とりあえず服着て。朝ごはんにしましょう」
朝からこんなやり取りをしているけど、ホークは私の事を心配してくれている。
私は全力の笑顔を彼に送り、熱したフライパンにタマゴを二つ落とした。