家族
「ただいまー」
玄関のドアを開けるまでもなく、叡智さんの転移で居間に帰宅する。
「おかえりなさいませ。フレデリカ様。剣は偵察で出ております」
盾さんがお出迎えしてくれる。
閃光さんのおかげで、南アクワに居ながら北アクワの情報が入ってくる。
あの第一王子は無事に王座についたようだ。
機械式魔法戦車を失った北アクワは、やはり以前ほどの勢いは無くなった。
私が基地や兵器の生産工場も潰してしまい、通常兵器の生産効率も落ちてしまったみたい。
「叡智もおつかれさま」
「あたしは待機してただけだよ」
叡智さんはあんな事言ってるけど、ずっと私の魔力を感知して見守っていてくれている。遠距離の魔力を追うには、集中力が必要だ。私なんかより疲労は大きい。盾さんも、それをわかっているんだ。
「あのね。明日は仕事ないから出かけて来ていいかな?」
「そうしましたら私か叡智が護衛に……」
「ううん。大丈夫。危ない事はしないから大丈夫だよ。たまには二人も休んで。閃光さんにも伝えといて」
「わかりました。ないとは思いますが、危ない事があったら全力で逃げて戻ってきてください」
反対されると思ったけど快諾してくれた。少しは信用されてきたのかな。
「ありがと。嬉しい。蒼の剣が一緒だから大丈夫よ」
「叡智さんも許してくれる?」
お土産にもらった野菜を運んでいる少女にも許可を求める。
「あたしがフレデリカ様の行動を制約する事はできませんよ。フレデリカ様にも息抜きが必要ですから、逆に賛成です。でもお土産は期待しています。甘いやつがいいです」
「まかせて。甘いものなら任せて。ふふっ」
「叡智。フレデリカ様に、ご用を頼むのはどうかと思いますよ」
いやいや、そう言う盾さんの顔も顔が緩んでるから。
「盾さんの好きなカカオのお菓子も買ってくるから安心して」
「ありがとうございます!……い、いえ。無理しないでくださいね。時間が空いたらでいいですから。前回頂いたカップケーキなどをいただけたら……いえ、私はとくには……」
「はーい。カップケーキね。まかせて」
「すみませんフレデリカ様……」
顔が真っ赤だ。なんか可愛い。この人もこんな表情するんだ。発見。
「で、閃光さんの好みは、甘じょっぱい系よね。よし、頑張っちゃうよ私」
今日は早く帰ってこれたし、夕飯作っちゃおうかな。
「私は夕飯作るから二人ともゆっくりしてて」
「やったー。フレデリカ様の作ってくれたご飯美味しいから大好きです。王宮の人が作るものより美味しいです!あと……」
叡智さんが嬉しい事言ってくれる。
「ヴァニラでしょ?それはお風呂上がりに飲みましょ」
盾さんがワクワクした顔をしている。この人は正直だ。
「じゃあ出来たら呼ぶね」
この人達の反応は私も嬉しい。
きっと私の顔もユルユルなんだろうなぁ。