冒険者 その2
「フレデリカちゃん、本当にこれだけでいいのかい」
村の村長さんが申し訳なさそうに話しかけてきた。
手には今回の報酬がにぎられている。
年は六十歳くらいって言っていたけど若々しくて、そんなふうには全然見えない。
「奥様からも、お野菜も沢山いただきましたので。大助かりです。はい、報酬分、確かに受けとりました」
金貨が入っている袋を受け取る。
「でも、これじゃあ相場の半分もないよ。しかもギルド通してないから手数料も浮いてるんだよ。その分だけでも受け取る権利はあるとは思うよ」
申し訳なさそうにもう一つの袋を取り出す。
多分中身はお金だろう。
「大丈夫ですよ。お気持ちだけで嬉しいです。もしよろしければ、そちらのお金はご遺族に渡してあげてください……って、そんな泣かないで下さいよ。ほんと大した事はしてませんから。ねっ?」
「ありがとう、ありがとう……」
「フレデリカ、これも持っていって」
「おねえちゃん、ありがとう」
まわりに村の人達が集まってきた。
この村は心温かい人達ばかりだ。
私は、こういう人達の役に立ちたい。
「では、私はこれで。また寄りますので新鮮なお野菜お願いします」
手を振り村を後にする。
森に入り、見えなくなっても、見送りの声は聞こえてきた。
「あの子も待たせているし街にもどりましょ」
地を蹴りイメージする事で重力の支配から解放される。
もう空を飛ぶ事も呼吸をするくらい自然に出来る。
人には見られない様に雲の中入ったり、かなり高度を上げないといけない工夫は必要だ。
浮遊するには魔力を消費する。しかも結構燃費が悪い……らしい。私は魔力の貯蔵量が凄いらしく、魔力切れになった人の気持ちは今だに分からない。
だからジグザグに飛んだり、急降下したりと魔力の無駄遣いをすると、
「何があるかわかりませんので少しは考えて行動して下さい」
と、今だに家族からお小言をいただく。一回やってみたらいいのに。楽しいから。
特別な力をもらったけど、空を飛べるのが一番嬉しい。
とか言うと蒼の剣が拗ねるので、空を飛べる力は二番目に嬉しい能力だ。
今みたい鳥さんと並行して空を飛ぶのも素敵だ。
地上からは分からなかったけど、空にも沢山の生き物が生きているんだ。
湖が見えてきた。急降下して水面ギリギリを飛ぶ。
片手を水につけると、飛沫で白い線が湖に刻まれる。
冷たくて気持ちいい。
再び急上昇。
街が見えてきた。
街の一番高い所にある時計塔が待ち合わせの場所だ。
人に見られない様に垂直に下降する。
「叡智さん、お待たせ」
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