すべてが終わったら
「おかえりなさいませ。フレデリカ様」
「ただいま。あなたの言う通りバングル持っていたわ。内側にイニシャル入っていたから間違いないと思う。ありがと。これだけでも取り戻せた……」
「……フレデリカ様。今から余計な事を申し上げます。お気にさわるようでしたら申し訳ございません」
小さな聖騎士が心配そうな表情でこちらを見つめている。
「そんなに無理しなくてもいいのではないでしょうか。研究施設を破壊しただけでも大変な成果だと思います。あたしはフレデリカ様の心が壊れてしまうのではないかと心配です。フレデリカ様の心は、ずっと泣いています」
私の心を見透かさないで。私は泣いていない!泣かないって決めた。
それに、そんなに優しい言葉かけられたら、せっかく固めた決意が崩れてしまう。
だから……だから……やめて。
「心の中を勝手に読むのやめてって言ったでしょ!私がやるしかないの!こんな事私にしかできないでしょ!もう嫌なの!私みたいな気持ちになる人が出てくるの。シャルみたいに人生台無しにされちゃう人を見るの。だから!『アレ』に関わった人間は私が全て駆除しないと駄目なの!」
思いのたけを全部吐き出してしまった。
何苛ついているんだ私。こんな小さい子にあたって最低だ。
この子は最近まで敵だったにも関わらず、私の事を心配してくれているんだ。
「ごめん。言い過ぎた。わかってるよ。自分が何をやっているのか。ちゃんとわかっているから。でも嫌なの。また同じ事が起こるのが。だからタンクという技術は私が全て滅ぼします。心配しないで。もう泣かないから」
「泣きたい時は全部吐き出してしまった方がよろしいと思います。我慢しすぎると心が濁ってしまいますよ。それに、あたしは、あの戦車の兵士と約束しました。自らの命を捨ててまで、あなたの事を救おうとしました。最後まであなたの事を愛していました。だから、そんな人との約束を、あたしは果たさないといけないのです」
ホーク……ホーク……ごめん……ごめんなさい。私はこれだけはやり遂げないといけない。あなたの望んだ私にはなれないかもしれないけど、あんな残酷な兵器は作ってはいけないんだよ。私が英雄の生まれ変わりであるならば、あれを滅ぼさないといけない。
「叡智さん。ありがとう。でも大丈夫。もう、そんなに時間かからないから。これが終わったら違う生き方も考えられる気がするの。だから、あと少しだけ助けてほしいの。お願いします」
深々と頭を下げる。
「顔をお上げてください。聖騎士がフレデリカ様を助けるのはあたりまえです。あなたは、あなたの心の赴くままに行動してください。あたし達三人の聖騎士は、フレデリカ様の目指している世界まで、お供いたします」
「ありがとう。すべてが終わったら……もし終わらせる事が出来たのなら。私はあなた達と楽しく暮らしたい」
本心からそう思った。