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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第一章 魔法戦車と魔法少女
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プレゼント

 私も空を飛ぶことに慣れてきた。


 そう。私ってば呑み込みが早いのよ。

 タンクの時は役割が分担されていたから、あまり目立つ事もなかったけど。

 紙の試験は成績上位だったし適応能力も高いと思うのよね。ほら、今のこんな最悪な状況にも対応できているし。


「ふふっ、これで魔力量だけしか能がない、とか言わせないから」


「フレデリカ様。誰に言わせないのですか?」


「あっ!ちょっと。勝手に心読むの駄目だからね。叡智さん」


「いえ。ちゃんと言葉に出されていましたよ」


「ほ、ほんと?」


 これは私の方が駄目だ。最近独り言が多くなっている……

 それよりも……

 

「綺麗!夜の街の灯りが、こんなに綺麗だなんて。報告って、これを見せたかったの?」


 研究施設の処理に時間がかかってしまい、すでに外は夜の闇につつまれていた。

 街を歩いているとごちゃごちゃしている灯が、高いところから見ると赤や青の灯りも見えて、とても綺麗だ。

 


「いえ……うーんどうしよう。また血生臭くなってしまうかもしれなくて……せっかくフレデリカ様がリラックスされているのに」


「大丈夫だから。話して」


「あのですね。さっきの研究室で貴金属の箱を見つけた時。フレデリカ様、そちらと同じデザインのバングル探していらっしゃったので。念のため半径三キロほどの範囲で同じ形状のものを探索しましたところ、ほぼ同じものが見つかりまして……」


「!」

 

「それが、あそこの軍服の男が持っている箱の中身がそれなんです。ちなみに、アレは研究所関係者で抹消予定の人間ですのでもしかしたら……」


「そう……あれは取り返さないと。しかも消す人間だなんて。探す手間省けてよかった」


 眼下にいるターゲットに狙いをさだめる。


「叡智さん。ちょっと行ってくるね。すぐに戻るから待っていて」


「フレデリカ様。お気をつけて。あの者、先ほどから手当たり次第に女性に声をかけ、性的なお付き合いを求めています。ちなみに最後のは心の中の欲求の声です」


「うん。わかったわ。将来、あなたにお付き合いを求めてくる男性は大変ね。ふふっ」


 建物の端から一歩踏み出し、そのまま自然落下に身をまかせる。

 重力に従いながら男の手元を観察する。

 確かに小さな箱を持っていた。

 綺麗に装飾されているから贈り物用だろうか。

 まさか、あの中身が……ありえるか。


 人に見られない物陰に音を立てずに着地する。

 ゆっくりと男に近づき、視界に入る位置で前を通りすぎる。


「 すみません。そちらのお嬢さん」


 早いなぁ。私もまだまだモテ期滞在中だ。よかった、よかった。


「わたし?」

 

 ここからは上手くやらないと。覚醒して英雄の力を手にしたけど、どうやら『ナンパされる女子を演じる』という技能は、その中に入っていないらしい。


「そうです。実は私、軍の仕事でこの街に来ていまして。食事する場所とかわからなくて。詳しい人探しているんです。よかったら一緒にどうですか?もちろんお礼にごちそうしますよ」


 この口説き方の採点が高いか低いかはわからないが思惑通りだ。


「はい。時間ありますし大丈夫ですよ。じゃあ、ちょっと歩きますけどいいですかぁ?よく行くお店があるんですよぉ」


 やっぱり叡智さんに記憶探ってもらえばよかった。

 シャルのバングルの事だから自分がやらなきゃって張り切りすぎた。ここまで来たらやりきるしかないのだけど。


「軍で働いているなんて、すごいですぅ!なんか見た目とか、カッコいいし素敵ですねぇ。軍隊では、どんなお仕事してるんですかぁ?」


 うえぇ……自分で言うのもなんだけど気持ち悪っ。


「気になりますかぁ?えへへへ。私は医療部門で仕事しているんです。しかも結構重要な内容なんですよ。責任重大で。まぁその分、お給料もいいんですよ。はははぁ」


 私より気持ち悪い人いた。


「先日も、女性の患者さんでお礼に結構なアクセサリーもらったんですが、あっ、ちょうど良かった。これ、よかったら受け取ってください。私使わないので。案内してもらうお礼ですよ」

 

 何これ。簡単なんですけど。

 もうこれ、中身確認して回収したら斬って終了じゃないかしら。


「えぇ、いいんですかぁ?嬉しいです。見てもいいですか?」


「もちろんだよ。気に入ってもらえたら嬉しいな」


 箱をあける。

 中にあったのは自分が身に付けているバングルと同じデザインだった。



「あの、こちらの道が近道なんです。薄暗いので普段は通らないのですが、今日は頼りになる男性がいるので安心ですね」


 なるべく自然な笑顔を送る。

 上手く笑えているかどうかはわからないが。


「任せてよ。何かあっても僕が君を守るから。頼りにしてよ」


 肩を抱き寄せられた。

 わずか数分の散歩で、よくぞここまで馴れ馴れしくなれる。

 

 路地に入ると一気に薄暗くなる。

 ここなら人も通らない。


 心の中でパートナーの名前を呼ぶ。

 上空から蒼の剣が雷の様に落ちてきた。

 男の右肩に突き刺さる。勢い余って、地面に突き刺さる。必然的に腕が落ちた。


「えっ?」


 男が不思議そうな顔をしている。

 自分の身に何が起こったのか、わかっていないみたいだ。


「感謝して。楽にしてあげる」


 地面にある剣を引き抜き、その勢いのまま首を切り落とす。

 

「プレゼントありがと」


 包装は投げ捨てバングルのみをポケットに入れる。

 そのまま地面の石畳みを蹴って宙に飛び上がった。

 

 


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