栗色の髪の少女
「はぁ、さっぱりしちゃった。私の家のお風呂大きくて気持ちいいでしょ?あっ、でも正確には自分の家ではないけどね」
となりにいる少女の栗色の髪を乾かしながら顔を覗き込む。
今気付いたけど髪型は私とお揃いだ。
「はい、フレデリカ様!あたしお風呂はじめでした!いつもは魔法で体も服も一瞬で綺麗にしてたので。こんな体験貴重です!」
鎧を取ってしまうと、どこから見ても懐っこい普通の女の子だ。私の妹にしたいくらい可愛い。口調も前より、だいぶ可愛くなった。
「気に入ってもらえて私も嬉しいわ。今度からお風呂入る時は一緒にはいりましょ」
「はい!今まで、『人間は入浴とか面倒な事するんだなぁ』とか思っていましたが目から鱗です!」
そして、この部屋ともこれで最後だ。
もう、ここに戻る事は出来なくなる。必要なものは今回収しなくてはならない。
シャルとお揃いのバングルはすでに身につけている。
使い慣れたフライパンや鍋は名残り惜しい。
住むところも見つけないといけないし、しばらくは慌ただしい毎日になるかもしれない。
部屋を見渡す。
部屋の至る所に思い出がある。
ホークと思い出……
シャルとの思い出……
私の人生にとっては両方とも楽しく素晴らしい思い出だ。
軍服はもう着ない。
私はもう、この国の人間ではないから。
とりあえず動きやすい服装でいいかな。色は白くない方がいい。返り血を浴びたら目立つもの。
主に持ち出すのは小物だけだ。
お気に入りの服も諦めをつけた。
隣にいる少女を見ると、すでに銀色の鎧を身にまとっていた。
すっかり聖騎士だ。
これで準備は万端かな。