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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
新第二章 復讐の女王
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番外編の番外編 水道真琴の初恋 後編


 うーん……どうしよう。会社で所長がやっていた様にどんぶりから直にお米をかき込みたい。でもマナー的にどうなのかしら。自宅でやろうものならお説教からのマナー講座になってしまう。

 根坂間薬師、あなたはどうなの?男の子だからやっぱりガツガツいきたいわよね?よね?

 視線だけを右隣の根坂間薬師の方に向け様子を伺う。

 えっ?何それ?赤いんですけど。

 先ほどまでお醤油色の美しかったどんぶりが、今は真っ赤な尋常じゃないカラーリングに変化している。

 何なの根坂間薬師。その赤い輪ゴムの様な物体は。


「あっ、先輩。先輩はコレ反対派ですか?でもコレで味変すると口の中リセットされていいですよ」


 視線に気づいた根坂間薬師が銀色の金属の入れ物をこちらに差し出してきた。

 その銀色の入れ物のフタをあける。その中には真っ赤な色をした輪ゴム……違う。これはしょうが?この香りは紅しょうがだわ。私の知っている紅しょうがはここまで凄まじい色はしていないけど間違いなくしょうがだ。


「先輩は紅しょうが好きですか?ぼくは必ずやるんです。まぁ、これってマナー違反とか調理してくれた人に失礼とかって批判されたりするんですが美味しいからやめられないんですよね」


 根坂間薬師のどんぶりを見ると、牛肉が見えないくらいに紅しょうがが乗っかっている。『紅しょうが丼』と言っても過言ではない。

 紅しょうが丼とまではいかないけど少し試してみようかしら。

 銀の容器の蓋をあける。

 中には紅しょうが山盛りで入っている。その紅しょうがには小さなトングが突き刺さっていた。トングを使い、牛肉の上に紅しょうがをのせる。

 わりと多めにとったつもりだったが、どんぶりが大きすぎる為、少量に見える。

 牛肉の温度で温められた紅しょうがの香りが鼻腔を刺激する。酸っぱい香りと牛丼のお醤油の香りがミックスされてさらに食欲を増進させる。

 お肉と紅しょうがを一緒にほおばる。

 おいしい!

 想像以上にあう。

 紅しょうがのシャキシャキが心地良い。これまで食べ進めてきた味覚がリセットされる。

 再び最初の一歩から挑ませてくれるこの刺激。

 これなら私はまだまだ闘える。

 根坂間薬師。ただの事なかれ主義の八方美人かと思っていたけど少しだけ見直したわ。あなたから学ぶものがあるとはね。ありがとう。

 


 おかしい。かなり食べ進めたと思ったけど、まだ半分くらい残っている。さすがスーパーキングサイズね。

 まずいわね……ごはんがツユを吸い過ぎてベチャベチャになりかけている。後輩の前で無様な姿を晒すわけにはいかない。


「先輩、大丈夫ですか?」


 気がつくと根坂間薬師がこちらを覗きこんでいる。


「え、ええ大丈夫よ」


 ほんとうは全然大丈夫ではないのだけれど。


「……先輩、どんぶり交換しましょ」


「えっ?」


 私の前に空のどんぶりが横からスライドして現れた。かわりに半分くらい残っていた自分の食べかけの牛丼が目の前から消える。

 もしかして私が限界に近い事を察して、かわりに食べてくれるっていうの?


「ちょっと薬師くん!私の食べかけで汚いから無理しないで」


「すみません。先輩が僕と同じものを注文した事に気づいたのですが声かけなかった僕も悪いです。大丈夫です。少しだけ待っていて下さい」


 な、なんなのコイツ……めっちゃイケメン対応……

 あっ……ダメ。なんか胸が苦しく……ドキドキが止まらない。なんなのこれ?なんかこの症状、本で読んだ事ある……

 実用書等ではなくて、たしか小説……恋愛小説……恋愛……恋⁉︎

 ま、まさか、この嘘つき後輩に私が惚れてしまったとでもいうわけ。

 私を惚れさせる男性はもっと、こうなんていうか私の家ほどじゃなくとも、それに近い地位がある家の紳士に違いないもの。これまでの人生、異性に惹かれる事なんて一度もなかった。あまたのお見合いもすべて蹴散らしてきた。

 それが、こんなつまらない男に……


 あぁ……やばい。私の食べ残しを食べてくれている。さすがにあの量をたいらげるのは苦しいに違いないわ。それでも私の為に無理をしてくれている。


「先輩、お待たせしました。僕もこんなにたくさん食べるの初めてかもしれません。ふぅ」

 少し苦しそうながらもわたしに気を使わせないように微笑んでいる。


「本当にありがと。根坂間くんって優しいのね。わたし……」


 どうしよう。かっこいい……わたし好きになってる。


「気にしないでください。これから先輩には仕事の事いろいろ教えてもらう事になるんですから。あっ、そろそろお昼休み終わってしまいますね。お会計して戻りましょ」


「そうね。すみませんお会計お願いします。クレジットでお願いします」


 カードをお店の店員さんに差し出す。


「お客さん。すみません、うちクレジット使えないんですよ。現金のみでお願いします」


 えっ!嘘でしょ!今どきクレジット使えないお店とかあるわけ?ど、どうしよう。現金なんて一円も持ってないわ。そもそも最後に現金見たのいつだったかしら。

 いや、今はそれどころではない。このままでは無銭飲食で犯罪者になってしまう。水道財閥の私が逮捕なんて事になったら、絶縁されて戸籍から抹消されてしまう。


「ごめんなさい!必ずあとで支払いに来ますから警察だけは……」


「先輩。ここは僕がご馳走する約束じゃないですか。この前のお返しですよ。忘れちゃったんですか?すみません店員さん。お会計まとめてお願いします」


 ずきゅーん!


 恋のアサシンにハートを撃ち抜かれた。


 薬師くん。二人で人生添い遂げましょ。

 大丈夫。薬師くんは必ず私が幸せにしてあげるから。

 


                        FIN                   


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