英雄
目を開くと涙が流れていた。
「そんな……お父様やお母様、屋敷のみんなを殺したのがホークだった。しかも、みんなが死んだのは私のせい」
「あなた様に罪はございません英雄様」
傷付いた私を慰めるようと思ったのか、小さな聖騎士が手を握ってきた。
「嘘よ。こんなの。こんな残酷な事あるはずない!あなたが見せたまやかしよ!」
自分の手を握る小さな手を振り払う。
「真実でございます。英雄様」
「私の事を英雄だなんて呼ばないで!私はそんなものになんてなりたくない!」
「それではフレデリカ様。次はあなた様の記憶をお見せします。お見せすると言うよりは、封印された記憶の扉を解放させます。では、失礼します」
「なっ、何を勝手な事を……きゃあ!」
頭の中で突っかかっていた何かが崩れていった。
「そうなんだ……私は南アクワの人間……私の故郷は南アクワなんだ。さらわれて記憶を書き換えられて利用されていた」
何だ……この気持ち。虚しい。いや違うかな。これは怒り。
「ご気分はいかがでしょうかフレデリカ様。記憶の封印の破壊と必要な情報をお伝えしました」
そして……
聖騎士の手から何かが私の中に入ってくる。
それに刺激されたカラダの中にある蒼い塊が反応しはじける。その蒼い塊の中にあったものがカラダの隅々まで染み渡っていく。
あぁ……満たされる。気持ちいいよぉ。ドキドキして気持ちが昂って。力が溢れてジッとしていられない。
時間が経つにつれ昂ぶりは徐々におさまっていく。
でも消えたわけじゃない。私の奥の一番深いところにいる。いつでも『これ』は取り出せる。
すごい静かだ。妙に落ち着いている。
先ほどまでの混乱していた自分が信じられない。
「…………そうなんだ。みんな私と一緒なんだ。シャルや他のみんなも。さらわれて。勝手に体と記憶と改造されて燃料タンクにされて。私だけじゃない。全部わかったよ。お父様……お母様……そしてシャル……ありがとう。おかげで私らしく生きていけそう。でもその前に、私にはやらなければいけない事がある」
天井を見据える。
そこに強い生命エネルギーを感じる。
「こんな事まで出来ちゃうんだ。すごいわね英雄って。ねぇ聖騎士さん。私一つだけ、やる事があるんだ。ちょっといいかな」
「はい。もうフレデリカ様を縛るものは何もございません。心の赴くままに」
「うん。じゃあ、ちょっと行ってくるね」