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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
新第二章 復讐の女王
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番外編 女坂探偵事務所 根坂間薬師の奮戦記   魔王城にいこう その1

 

 ホテルを出るとタクシーが止まっていた。ドライバーと視線が合う。


「根坂間様、お待ちしておりました。どうぞこちらに」


 後部座席のドアを開けてくれた。 

 水道真琴が手配してくれたのであろう。行先を聞かれる事もなく車は走り出した。

 窓から外を眺めながら考える。どうしたら今回の件を上手く解決できるのか。出縄早紀とお腹の子供を救えるのか。ユウキの事だって少しの進展もない。やはり水道真琴の言う通り他のスタッフにまかせるべきなのであろうか。

 朝日が窓から車内に差し込んでくる。太陽の光が眩しくて考えを阻害する。


「根坂間様。到着いたしました」


 んっ?ここは……


『温泉大魔境』

 ファンタジーでアドベンチャー的な雰囲気の看板をかかげた建物の前で下ろされた。

 コンクリートでできた岩場や火山で建物が囲まれ、某有名テーマパークの雰囲気だ。火口からは噴煙に見立てた水蒸気が吹き出している。

 六階ほどある建物はコテコテの魔王城。大手の高級デパートくらいの大きさはあるだろうか。


『朝風呂やっています』


 派手なのぼりが建物を囲む様に立てられている。

 あぁ、ここってテレビでよく取り上げられる温泉テーマパークだ。あまり詳しくは知らないが、ほぼ二十四時間営業しているらしい。


「根坂間様。九時に玄関前におつけしますのでよろしくお願いします」


 運転手の男が外から車のドアを開けて誘導してくれた。

 なるほど。これは水道真琴の指示なんだろう。

 ガラスで自分の姿を見てみるとほとんど寝起きの状態だ。

 ここで身だしなみを整えてから出勤しろと言うことなんだろうか。

 まぁ、シャワーくらいは浴びたいと思っていたからありがたく利用させてもらおう。

 運転手から受け取った入場チケットを確認する。


『魔王城最上階の湯』


 まがまがしいデザインの文字が半強制的に目を引かせる。

 どうやら階によって料金は別の様だ。

 ゲームに出てくる木の立て看板が入口に立っていた。木の立て看板と言っても金属でできているのだが。

 その立て看板をみるとフロアーのガイドになっているのがわかる。

 

 一階 草原の湯

 二階 山岳地帯の湯

 三階 大海原の湯

 四階 洞窟の湯

 五階 魔王城最上階の湯

 

 コンセプトはわかるのだが、実際の風呂がどうなってしまっているかは全く想像できない。

 エレベーターに乗り五階のボタンを押す。

 閉のボタンを押し、エレベーターの扉が閉まると同時にポケットの中の携帯電話が鳴り始めた。

 液晶には水道真琴の文字が表示されている。正直応答したくない。とりあえず気付かないフリをしよう。

 五階に到着した。

 エレベーターを降り自動ドアをくぐると受付カウンターがあった。建物の外観とは違い、いたって普通で拍子抜けだ。


「おはようございます。いらっしゃいませ」


 受付の眼鏡をかけた男性スタッフが愛想よく対応してくれる。


「どうも。これ使えます?」


 水道真琴からもらったチケットを差し出す。男性スタッフと違い、自分には愛想のカケラもない。


「いつもご利用ありがとうございます。もちろんご利用できますよ」


 爽やかな笑顔でチケットを受け取り受付をしてくれる。


 ブブブ……


 ポケットの中で水道真琴の着信が続いている。

 しつこい。いい加減諦めたらどうだろうか。たくっ……


「すみません、ちょっと電話いいですか?」


 携帯をポケットから出し、入館の手続きをしてくれてる受付の男性スタッフに見せる。

 手を差し出し、どうぞ、というジェスチャーを返してくれた。


「はい、根坂間で……」


「ちょっと。応答するの遅いのだけれど」


 ホテルの時よりも機嫌の悪そうな声がスピーカーから聞こえる。あえて着信を無視していた事も伝わっていそうだ。よかったよかった。


「あのねぇ、調査から外すって話でふて腐れているのなら今すぐ家に帰りなさい。そして次の職場を探すのね。もしくは、私の家で主夫になるというパターンでもいいわよ」


 この人はどれだけ自分本位なのだろうか。


「水道財閥の跡取りになるのがまだ早いと思うのなら私の指示に従いなさい」


 好条件の縁談ではあったが、もう少し自由な生活を満喫したい。


「すみませんでした。ぼくも大人げなかったです。それで何をすればいいですか?」


 謝罪はしたが本心ではない。まぁ水道真琴の事だからそれも見抜いているだろう。


「そうね。そこの施設に『天沼弘樹』っていうスタッフが働いていると思うの。たぶん薬師くんの目の前にいるかもしれないわよ」


 いったい何の話をしているんだ。


「ちょっと近くにいる従業員さんの名札見てもらっていいかしら」


 近くの従業員というと自分を対応してくれている受付の人。

 携帯を耳にあてながら振り返る。受付の男性は視線を下に落としている。端末で何か入力しているみたいだ。

 視線だけを動かし横目で名札の文字を見る。


『天沼弘樹』


 水道真琴の言う通りの名前があった。


「真琴さん、ぼくって体のどこかにカメラ仕込まれてます?もしかして」


 この人ならやりかねない。


「今日はしてないわよ。それよりも、これから大事な事を言うから心して聞いてちょうだい。どんな衝撃的な内容でもリアクションとっちゃ駄目よ。いい?」


 『今日はしてないわよ』っていう一文がすでに衝撃的なのだが……


「大丈夫ですよ。ぼくだってこういうのプロですから」


「わかったわ。そこにいる天沼弘樹ってのが早紀ちゃんのお腹にいる赤ちゃんの父親よ」




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