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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
新第二章 復讐の女王
413/436

番外編 女坂探偵事務所 根坂間薬師の奮戦記   避難


             1


 あまり気が進まないが、あの人に頼るしかない。携帯を取り出し、職場である女坂探偵事務所に発信する。


「お電話ありがとうございます。こちら女坂探偵事務所の水道真琴と申します」


「真琴さんですか?薬師です。ちょっと急ぎで助けてほしいのですが。僕のアパートまで車で来れます?あとホテルの部屋を一室キープしてほしいのですが」


「えっ?薬師くん?お迎えとホテル……わ、わかったわ!十五分で行くから待っててね!」


 最後の「待っててね」とほぼ同時に電話が切れた。

 水道真琴の好意を利用するのは気が引けるが緊急事態だ。一刻も早くこのアパートを離れるのが先決だと考える。

 これからのプランを頭の中で練っていると、アパートの前で車の止まる音がした。車のドアが開きアパートの階段をかけ上がってくる音がする。ヒールの音からすると水道真琴だろう……ってまだ十分ほどしかたってないのだけれども。そう思っていると、いつも通り鍵がかかっているはずのトビラが勢いよく開いた。


「おまたせ薬師くん!あなたの為に全速力で来たの!私も含めて準備は万全よ……って……何その女?」


 その女とは布団で眠っている出縄早紀の事である。

 その光景を見た水道真琴の表情が一変する。やはり先に状況説明すべきだったのかもしれない。


「真琴さん、違うんです。この人は隣の部屋の人で……」


 説明におそよ一時間という時間を要した。

 緊急だというのに……





             2


「それで?薬師くんはこれからどうするの?その襲ってきた人間が誰なのかってわからないんでしょ」


 運転席の水道真琴が現在ある問題点を口にする。


「それはホテルに着いたら彼女に聴こうと。とりあえずは二人を安全なところで休ませないと」


 首を傾け後部座席の出縄早紀とユウキの様子を伺う。二人とも目は覚めているが疲労でじっと動かない。ユウキは怯えた様子で出縄早紀にしがみついていた。


「でも真琴さん。よく十数分でホテルの部屋とってウチまで来れましたね。僕だと二十分ちょっとかかりますよ」


「知ってるでしょ。結構有能なのよ私。ちなみに道路交通法に違反する様な事はしてないわよ」


 彼女にとっては造作もない事なんだろうか。表情も変えずサラッと言い放つ。


「それはそうと……」


 まずい。ハイスペックなモンスター『水道真琴』を召喚した代償がくる。


「よくも純粋な乙女の気持ちを利用してくれたわよね。やっと薬師くんから誘ってくれたと思って、とっておきの部屋予約しちゃったじゃない。それなりの埋め合わせはしてもらうわよ」


「そんな利用だなんて。その言い方じゃ僕が真琴さんを騙そうとした……」


 そこまで言いかけ口を止めた。

 水道真琴の表情がどんどん険しくなっているのが確認できたからだ。そうだった。彼女には嘘がつけない事を忘れていた。

 先程より運転が荒くなっているのは気のせいではなさそうだ。


 ガクン


 急停車で車体が前後に大きく揺れた。


「着いたわよ。薬師くん」


 ちょっとだけドスのきいた水道真琴の声に外の景色を見るとホテルのエントランス前に到着していた。

 お値段がお高いことで有名な一流ホテルだ。


「薬師くん……さぁ、先にお部屋に行って。フロントで私の名前言えば案内してくれるわ……あなたのために最上階のスイートをとってあるの。素敵なお部屋よ。大切な人と一緒に過ごそうって見つけておいたお部屋なの。ほんとうは二人でお泊まりするつもりだったのだけれど邪魔な女と……」


「ありがとうございます。真琴さんしか信頼できる人がいなかったので。真琴さんだけです。こんな事お願いできる人は。僕にとって特別な人なんでしょうね真琴さんは」


 嘘は言っていない。

 これが彼女の嘘を見抜くスキルの弱点だ。こんないかにもな台詞でも嘘はついていないから彼女は信じるのだ。ここに『好き』や『愛している』というワードを入れると嘘と識別され彼女は暴走モードに入ってしまう。


「薬師くも私にとって特別よ。あなたからそういう言葉がきけるなんて嬉しいわ。それに薬師くんと再びこのお部屋に来れるなんて」


 よかった。機嫌が良くなった。

 あれ?今気になるワードが出てきた様な。自分、このホテルに来るのは初めてのはずなのだが。

 まぁいい。今は二人を休めるのが優先だ。


「ありがとうございます。じゃあ先に行ってますね」


 

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