早めの再会 その2
何かで首のあたりを刺された。
刺されたといっても刃物みたい物騒な感じではなく、虫に刺された風の痛み。いや、痛みと言う程でもないほどの刺激だ。
でも体に異変を感じる。
苦しいとか痛いとかじゃない。
お酒を飲んで酔う感じに近い症状。
正直な話、わりと心地よい気分。
「あっ……あれ…… 何これ?ポカポカして気持ちいい……なんか……フラフラするし。何したんれすか……あれ?凛ちゃんだぁ。久しぶりぃ」
いつの間にか目の前に親友とも呼べる女の子が立っている。
手には注射器みたいな器具を持っている。
「お久しぶりですフレデリカさん。『一瞬でほろ酔いになる薬』を投与しただけです。人体に無害ですから安心してくださいネ。それよりも…………酔っ払ったフレデリカさんも可愛いですネ。ではこのノリで今夜は飲みに行きましょ!私も今日は上がれますので完璧展開です」
何か薬を盛られたようだけど……
だめだ。蒼の剣がいないから解毒できない。
不意をついて薬物投与って。完全に犯罪者ではないか。
それにしてもフワフワして気持ちいい。
まぁ……いいか。この報復は酔いがさめてからすればいい。
「わかったわよ。それじゃあ美味しいとこに連れてってくださいよね。さぁ行きますよ!はいはい」
なんか酔いがまわって思考が働かない。
本来の目的を忘れたわけじゃないけど、目の前にいるスーツの女性、『水道真琴』には逆らえない。別に上司とか、そういうのではないのだけれど。
「ちょっとフレデリカ。凛はまだ業務中だから。あと二時間くらいだから待ってなさい。ほら。休憩室にでも行ってウダウダしていなさい」
背中を押され、半強制的に事務所から追い出される。
「フレデリカさん!終わったら迎えに来ますから。大人しく待っていてください。私のゲーム機貸してあげますから」
なんか私……。問題児扱いを受けている気がする。
私そんなんじゃないのに。
元魔王様だから私。