表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第一章 魔法戦車と魔法少女
4/436

フレデリカ・クラーク その2

 鍋から下ろしたお肉を、2センチくらいに厚切りで切っていく。

 表面はタレでツヤツヤ。切った断面はほんのり赤みがさしていて、このままでも口の中に入れてしまいたい。

 とりあえず6枚くらいでいいかな。残りは冷蔵庫で保存して、彼のお弁当にでも入れてあげよう。

 切ったお肉を熱したおいたフライパンに投入。

 お肉についている脂が熱で溶け出し、キッチンに食欲をそそる香りを展開し始めた。

 高温で表面に焼き色が付くくらい火を通し、お皿に盛り付ける。

 その上から煮込みに使ったタレをかける。

 冷蔵庫からサラダを取り出し、温めておいたトマトスープを二人分用意。


 早く用意してあげないと彼が餓死してしまう


 テーブルに料理を設置。

 あとはターゲットを呼ぶだけだ。


「ホークー!お待たせ。出来たわよ。こっちに来てー」


 疲労と空腹で、ソファーに瀕死状態の兵士を召集する。


「うーん……フレデリカ、ありがと……いま行く……」


 冬眠からさめた熊のような動きでソファーから立ち上がる。


「もしかして眠ってた?ごめん起こしちゃって。でも夕飯一緒に食べたくて」


「いいんだ。いつもすまない。フレデリカの料理は毎日の楽しみだから。ありがとう」


あれ?毎日って……確かに最近は一緒に過ごしている時間が増えたと思うけど……

 うーん……確かに。考えてみるとお風呂と睡眠の時以外は、一緒の時間を過ごしている気がする。

 これって恋人として付き合ってるのかな……

 いやいや、告白とかしてないし。それにホークは私の事、女として見ていない……


「どうしたフレデリカ。なんか怖い顔してるぞ。愛妻料理が冷めないうちにいただきたいのだが」


「べ、別になんでもないわよ。あと愛妻じゃないし。さぁ、いただきましょう」


 冗談で言われた『愛妻』というワードに、あやうく動揺するところだった。危ない危ない……彼にまんざらでもない事がバレてしまうところだ。

 私だって18の女の子だ。記憶がなくても恋はできる。自分の気持ちにも気付く事くらいも。

 でも私の様な記憶喪失の人間とエリートの彼が釣り合うはずがない。


「うん!美味しいよ。オレは、お上品な高級料理より、フレデリカの作る料理の方が好きだよ」


 ヤ、ヤバい……嬉しい……


「お世辞でも嬉しいわ。ありがと」


 彼は、こうやって言葉にして褒めてくれる。

 ちょっと頑張りすぎて作り過ぎてしまった気がするけど、喜んでもらえてよかった。


「申し訳ないけど今夜、泊まっていいかな?食欲も満たされたし、疲れで今日はもう動けない」


「ええ、もちろん大丈夫……」


 ちょっと待って!いま泊まるって言った!?今まで一度もそんな事言った事ないじゃない!

 何なの!?今夜何か起きるとでもいうの!


「じ、じゃあ私後片付けあるから先にお風呂どうぞ。いまお湯入れるから、ちょっと待ってて」


「いや、待ってるだけじゃ申し訳ない。洗い物手伝うよ……っと」


 急に立ち上がったホークは、バランスを失いよろめいた。


 ドンッ


 背中に突然重みを感じる。


「すまないフレデリカ。ちょっとよろけてしまったみたいだ」


 過程はどうあれ、背中から抱きしめられる様な体勢になってしまった。よくある恋愛小説にでてくるやつじゃない。あれってフィクションじゃなかったわけ!?


「ちょ、ちょっと、変な気起こしたなら帰ってもら……」


ドクン


 自分の心臓が世界を揺らしたのかと思った。


「あっ……あう……息が……はぁはぁ……苦しい……息が……できな……」


 私の体に何か起こりはじめていた。


「フレデリカ!どうした!?何が起きている!?」


苦しい。酸素を取り入れようと、意識して呼吸しているが全然肺にはいってこない。


「やめ…て……助けて」


何を言っているんだ私。

 ホークが何か話しかけているのがわかるが、脳がそれを理解してくれない。

 体の力が抜けて膝から崩れ落ちる。

 



 

 あれ……落ち着く。ホークの胸の中に抱きかかえられたら息ができる。

 

「ねぇ……ホーク……そのまま抱きしめていて……」


「フレデリカ!いま救護班を……」


「大丈夫だよ……もう大丈夫だから……もう少しこのまま……」


 遠くでお風呂のお湯が沸いた音が聞こえる。

 体がだるい。温かいお湯につかりたい。


「ねぇ……お風呂入りたい……」


「そんなんじゃ無理に決まっているだろ!」


「大丈夫……あなたが一緒なら大丈夫だから……」


ここまでお読みいただきありがとうございます。


興味を持っていただけたらブックマーク、下の評価の方よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ