番外編 天使フレデリカの翻弄 その6
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これまで、いくつの魔界を滅ぼしてきただろうか。
こんなに沢山の悪魔を殺してきたのに。それなのに胸に詰まる罪悪感がなくならない。
大切な人を救えなかった罪。
みんなは、まだ私を許してくれない。
「痛ぅ……」
私が心の奥底に秘める闇。
『憎悪』
それに紐づく唯一の過去。
それを思い出す度に頭痛が走る。
三人の勇者と三人の聖騎士。
六人の大切な人たちの惨たらしい死。
今でも脳裏に焼き付き離れない記憶。
でも何かが足りていない。
もう一つ。とても大切なピースが欠けている気がする。
「くそっ……なんなの……」
考えると瞼が熱くて痛い。
頬に筋を描きながら雨の様に落ちていく液体。
「くそっ!」
八つ当たり気味に右手の剣を振るう。
「ぐおおおおお‼︎」
目の前の魔獣が断末魔を上げる。
「コイツってなんだっけ?…… ウガルルムなんとかってやつか」
頭の鈍い痛みを紛らわす為に、目の前で真っ二つになった獣の名前を考える。
少しだけ痛みが和らいだ気がする。
「もう煩わしいな。残りのやつ面倒になっちゃった。蒼の刃にヤらせればいっか」
右手に握った剣に魔力を注ぐ。
力を注ぎ込まれた青いクリスタルの剣は輝きを増す。
そして、それに比例するように戦闘力も上がっていく。
「行けっ蒼の刃‼︎」
切先を正面の魔物に向け撃ちだす。
蒼い閃光が綺麗な直線を描いていく。
これで半径1キロの生き物は死滅する。
本当は、直接斬る感触が欲しいところだけど、こんな日もある。
「まぁ、いいか。メインディッシュを残しているし。この時代の『魔に堕ちた私』は楽しませてくれるといいのだけど」
これまで何人の『フレデリカ』を殺してきただろう。
別の平行世界には、何をどう間違えたのか魔族になった私が存在している。
「まったく情けない奴ら。闇落ちするなんて。同じ姿をしているこちらが恥ずかしくなる。この世界の『私』はそこそこ強い魔力を感じるから少しは楽しめるかもしれないわね」
FIN




