番外編 天使フレデリカの翻弄 その4
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「返してぇー!お願いだから返してください‼︎」
こんな醜態をさらすとは思わなかった。
両膝を地につけ額をを地面に擦り付ける様に頭を下げて懇願する。周りの冷たい視線が突き刺さるのを全身で感じる。
でも、そんな事構わない。あの子を取り戻せるなら。
「何を言っているのです?ニアは元々貴女のものではないのですよ。今頃ニアは、養成機関の施設に届いている。どっちにしろ気付くのが遅いのですよ」
「だって!それはあなたが!あなたが少しだけ休養しろって!」
「貴女がゴネるのがわかっていたからですよ。あと、その呼び名無礼ですよ。様を付けなさい。従属のくせに意見をするなんて。ここ数年で何か勘違いをおこしたようですね」
あぁ……私が甘すぎた。
私が幸せな未来を迎えられるはずがない。
この天使は、最初から私の血が必要なだけだったのだ。
「お願いします!あの子は!私にとってのニアは!」
それでも私は懇願するしかない。
あの子は私の生きがい。私にとっての全て。
「しつこいですよフレデリカ。貴女は用済みなのですから静かにしていなさい。貴女の処遇は後で考えます。私は忙しいのでフレデリカにかまっている時間はないのですよ」
「くそぉ!許さないガブリエル!私はぁ!わ……たし……」
頭の中にノイズが走る。
幾度となく体験している感覚。
修正だ。天使からの修正。
意にそぐわない行動がトリガーとなる。
従属天使に備わっている安全装置。
私にとっての呪い。
そうだった。忘れていた。私は天使共の奴隷だった。
元から希望なんてなかったんだ。
「あ…たまが……真っ白に……嫌……だ……私のニア……忘れ……ちゃう……ニアのこ……と……い……や嫌だ……」