番外編 天使フレデリカの翻弄 その2
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さらに季節は変わる。
毎日の悪魔駆除は変わらないけど、コンビで稼働するようになってから効率はよくなったし、ホークと一緒にいることによって、以前ほどの憎悪を表に出すことは減ってきた気がする。
私はホークのやり方を知っている。
剣技の癖や、得意な戦術。他にもいろいろ。
だから彼とのコンビは上手く出来ていた。
普段のコミュニケーションから戦いの連携まで。
このままいけば、もう一度、彼とゼロから恋が始められるかもしれないと思っていた。以前とは置かれた状況が全然違うけど。
昔みたいに、楽しい毎日が送れるようになるかもしれない。
そうしたら、憎しみとか悲しみも捨てて、彼とこの世界で新しい生き方が出来る。そんな気がした。
「現時刻より貴女には別の件に関わってもらいます。魔物駆除はホークに任せますので安心して下さい」
天使ガブリエルから突然の通達があった。
別の件?
私は魔族を狩る為に存在する。それ意外の事など考えられない。
「ガブリエル様。私は剣を振るうことしか出来ない蛮人でございます。それ意外の職など務まるはずが……」
「いえいえ。これまでは貴女がどれほど有能かを観察していたのですよ。私の予想通りでしたよ。流石は元『神の右腕』。潜在している力は我々の世界でも一級品です。貴女の魂を継ぐ子は、きっと偉大な力を持って生まれてくるでしょう。そういう強い力を持つものは神の目に止まり、高位な地位に就けるのです。意外でしょ?この神の御膝元は実力主義で成り立っているのですよ」
天使の笑いが普段より更に、いやらしく下卑たものに見える。
なるほど。
この天使の目的は、『使い勝手のいい戦闘マシーン』ではなく『優良な血統』だったということなのだ。
「というわけですから。元気な子を産んでくださいね。性別は関係ありませんから。ふふっ。これで私の家系も安泰ですね。私の跡取りが上級役に就けば父親にあたる私も鼻が高いです」
私の心が拒否を示そうとしている。
抑えないと。
天使の従属システムが動作して抵抗できなくなってしまう。
ホークの顔が脳裏に浮かぶ。
(嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ!)
これから上手くいくと思っていたのに。
ましてやこんなやつの子を……
(一刻も早くこの場から逃げないと……あっ……あ……)
私の脳内に何かが侵入してくる。
この感じは何度も体験して知っている。
(もう……手遅れ……な……にも考えられなく……)
意識がホワイトアウトしていく。
それと同時に、心の奥底に隠していた何かが消えていくのを感じた。