記憶 絶望 その7
「目覚めなさい。フレデリカ。もう腕も再生したはず。これで貴女は私の従属となりました。これより存分に働いてもらいます。過去のことは忘れなさい。貴女は救われたのですから」
天使の言葉通り、フレデリカの傷は癒えていた。
そして感覚で理解した。
この体が滅びることはない。
死という概念から解放されている。
それともう一つ……
天使ガブリエルには逆らうことが出来ない。
「さぁフレデリカ。まずは目の前の獣を処理しなさい。汚らわしい時の貴女の姿です。惨たらしい姿に変えてあげるといいでしょう」
フレデリカは思った。
この天使も汚らわしき存在。
理解もした。
私は、あの汚れた天使の従う者となったことに。
だが幸いなことに、アイツとの利害は一致している。
心の底に秘める闇に天使は気付いていない。
彼女は『憎しみ』と『忘れ得ぬ愛』の二つを、天使となった身体に残す事ができたのだった。
「わかっているわ。あそこにいるわたしをバラバラにすればいいのよね?そうね……同じ目にあわせてやる……四肢を切ってから、はらわたを引きずりだしてあげればいいのよね?」
それから一時間後。冥王龍の命の灯は消えた。
フレデリカの言葉通り、ゆっくりと命を削られて。
そして、元の巨体な姿に戻った龍の眼球に剣を突き立て、涙を流しながら笑っているフレデリカが立っている。
「なかなかでしたよ。さぁ戻りましょうか。貴女には他にも仕事があるのですから。くっくっくっ……腐っても神の右腕だった存在。さぞかし強い力を持った者が生まれてくるでしょう。私の系譜を作る役目を果たしてもらうとしましょうか」