シャルル・フォスター その3
考えすぎだ。
神経質になりすぎている。
そんな事があるはずない。
最近ずっと連絡取れなかったからって。
はははっ……どれだけマイナス思考なのだろう。
こんなだから友達できないんだな、私。
「…………………………」
あぁ嫌だ。今右の壁に何か見えた。
気のせいだよね。こんなところにいるはずないよね、シャル……
「ねぇ……いないよね?シャル……」
嫌な感じがする方向に視線だけを……視線だけをゆっくりと移動させ……
「いぁあああああ‼︎いやぁぁ‼︎いやぁぁ‼︎」
床に四つん這いで倒れ、再び胃の中身を吐き出す。
シャルがいた。
シャルル・フォスター。
そんなところで何してるのよ。
ずっと待っていたのに……
私の頭を優しく撫でてくれた手。
スタイルよくて綺麗な足。
長くて艶々な羨ましかった黒髪。
いつも、私の事を真っ直ぐに見てくれた目。
それらの全てがなくなっていた。
「聖騎士!あなたなら何とかなるんでしょ⁉︎シャルを助けてよ。私何でもするからあの子を元に戻して!お願いよ……お願いだから。お願い……お願い……」
自分より小さい女の子にすがるようにしがみつく。
あの子が元の姿になって戻ってきてくれるなら、敵だろが子供だろうが関係ない。
「助けて……助けてよ。お願いします……」
「……ごめん。確かに今も生物的には生きているよ。でも、体の中がほとんど残っていない。外からじゃわからないけど、中身がほとんど機械の集まりになってしまっているから」
「そんな……シャル……シャル……」
「おねえさんには気の毒だけど。元には戻らない。この子の事を想うのであれば楽にしてあげる事しかない」
「………………」
「もし……終わりにしてあげるのであれば、最後にあたしを通してお話しさせてあげる事はできるよ。このシャルって子、見たり聞いたり話したりはできないけど脳は生きている。人格と意識は確かに存在している」
もうシャルは戻らない。
私だったら、こんな姿で生きて辱しめを受けるなんて絶対に嫌だ。
私が……親友である私が……
「シャルと話したい……お願い……」
「わかったよ。最後のお別れしておいで」
叡智の聖騎士はシャルの入ったカプセルに手のひらをかざす。
「準備いいよ。おねえちゃん。あたしの右肩に手を置いて。そして目を閉じて」
「うん。ほんとにありがと」
言われた通りに目を閉じる。
目を閉じても涙が止まらない。
ヒュン!
地面が消えた。
そして、下に落下する感覚に襲われた。