偽物 その2
ドグァ‼︎
剣速から発生した衝撃波が壁の一角を削り取る。
この威力は、本気の全力で私を殺しにきた証拠。
危なかった……
とっさに同じ技を発動してかわす事が出来た。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思った。本格的に私そのものじゃない。しかも天使の私だなんて」
天使の私も驚きの表情を隠しきれずにいる。
「これは……何をした?動けるはずがない。この攻撃は避けれるはずがない」
ははは。驚いてる驚いてる。
「あら。とっくに理解しているのかと思っていたけど。私は受け入れているわよ。この摩訶不思議な現状を」
……なんて。
私が確信したのも、たった今なんだけど。
ちょっただけ強がってみる。
心理戦というやつを仕掛けてみよう。
「下賤な悪魔のくせに。何を知っているというのか。だが私には関係ないこと。悪魔は全て私が滅ぼす!」
あっ……心理戦に発展しなかった。
やっぱり慣れない事はするものじゃないわね……って
「うわっ!」
問答無用の斬撃が飛んできた。
あの私の攻撃は回避するしかない。
あの剣から繰り出される攻撃は受けてはいけないのだ。
剣や盾で受け止めてもダメだ。
私はあの武器を知っている。
なぜなら私自身が愛用していたから。
この世に一振りしか存在しないはずの魔剣。
『武器破壊の剣』
閃光さんの傑作品の一つ。
魔力を込めた斬撃で相手の武器や防具を破壊することに特化した魔剣。
過去に品評会での微妙な思い出のある品だけど、間違いなく強力な剣だ。
でも何故彼女が持っているのだろうか?
あの剣は地上の勇者に譲ったはず。
いろいろとわからない事はあるけど、結局は倒してねじ伏せてからの尋問しかなさそうだ。
「とりあえずは……」
玉座に目をやる。
メルセリウムの情報通り、私の相棒が縛りつけられている。
「蒼の剣を取り戻す!」